小児感染症科医のお勉強ノート

群馬県立小児医療センターで感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

がんを結核と誤診?結核流行地域でのわな。

 あまり結核を見慣れない方にとっては、「結核とがんって全然違う病気でしょ!」って感じると思います。しかし、結核はgreat imitatorで、臨床像が多彩で、典型的でない場合には、診断が難しい病気です。
 この研究は、南アフリカで実施された研究です。小児がんレジストリを使って、「がんと診断された時に抗結核薬を投与していた(つまり結核と診断していた)」患者の背景を集めた研究です。
 全患者の5%が、がん診断前に結核と診断され、治療されていました。特に、結核者との接触歴やHIV陽性の児で、そのように診断されるケースが多かったようです。
 がんの中でもリンパ腫が多いのは、リンパ節腫脹などが目立ちやすいため、結核性リンパ節炎と診断されたケースが多いことを示唆します。
 日本では、小児の結核罹患率は極めて低いため、この逆がありえることに注意です。「がんと思って紹介されたけど、結核だった」という症例に注意が必要です。
 
Childhood Cancers Misdiagnosed as Tuberculosis in a High Tuberculosis Burden Setting
Pediatr Infect Dis J. 2021;40:1076.
 
背景
小児の結核と悪性腫瘍は症状が重なることが多く、結核が多い地域では、悪性腫瘍が結核と誤診されることがある。
 
方法
 この後方視的研究では、2008年から2018年までに、南アフリカのTygerberg Hospital Childhood Tumor Registryに登録された小児がん患者における結核の診断について調査した。がん診断時に抗結核治療(ATT)を受けていた小児、またはがん診断後1か月以内に結核と診断された小児について調査した。
 
結果
 539名の小児患者のうち27名(5%)に、がん診断前にATTが開始されていた。がんの診断前に、肺結核と肺外結核とも診断されていた。がん診断時にATTを行っていた27名のうち、22名(81%)は結核患者との接触歴があり、12名中6名(50%)はツベルクリン反応が陽性であった。がん診断時、16/27名(59%)は、胸部X線写真の変化が結核によるもの解釈され、11/27名(41%)は専門家の読影結核の可能性が高いと判断された。結核の診断からがんの診断のまでの期間の中央値は25日(四分位範囲3.5-58)であった。小児がん患者539名のうち、204名(38%)ががんで死亡した。がん診断時にATTを受けていたでは、18/30名(60%)が死亡した。(オッズ比2.6、95%信頼区間:1.2-5.4、P=0.012)
 
結論
 結核とがんの症状が似ているため、一定数の小児がん患者の診断を難しくした。死亡率の増加にも寄与している可能性がある。
 
本文から抜粋した表
 
すべてのがん患者
がん診断時にATTを行っていた患者
p値
年齢中央値
4.78
5.48
0.779
女性
45%
56%
0.245
HIV陽性者
8%
20%
0.023
死亡率
38%
63%
0.007
がんの種類
 
 
 
血液悪性腫瘍
223/539 (41%)
16/27 (59%)
0.053
161/223 (72%)
8/16 (50%)
0.978
 リンパ腫
62/223 (28%)
8/16 (50%)
0.003
固形腫瘍
316/539 (59%)
11/27 (41%)
0.053
 脳腫瘍
112/316 (39%)
6/11 (55%)
0.958
 肉腫
73/316 (23%)
3/11 (27%)
0.705
30/316 (9%)
1/11 (9%)
0.665
 腎芽腫
44/316 (14%)
0/11 (0%)
0.112