小児の結核の診断には伝統的に、ツベルクリン反応が用いられてきました。しかし、BCG接種者では陽性になることなどから、解釈が難しいのが現状でした。成人では、T-SPOTなどのIGRAが一般的です。小児でもIGRAを使って診断する動きになってきていますが、年少児では偽陰性の問題もあり、あまり進んでいませんでした。
2018年からAAPが2歳以上にIGRAを使って良いとしてから、IGRA検査が増えています。今回の報告の要点です。
要点
・2歳以上の小児結核の診断は、ほとんどがIGRAを使うようになっている。
・特定の患者背景で、IGRA検査されるオッズ比が高い。
Increasing Use Of Interferon Gamma Release Assays Among Children ≥2 Years of Age in a Setting With Low Tuberculosis Prevalence.
Pediatr Infect Dis J. 2022 Dec 1;41(12):e534-e537.
背景
米国では、2005年に小児結核の診断にIGRAの使用を推奨された。2018年5月、米国小児科学会(AAP)は、低〜中リスクの患者の検査にIGRAを推奨する年齢を5歳以上から2歳以上へ引き下げた。IGRAの利点は、検査者間のばらつきが少ない、BCGワクチンとの交差反応がない、ツベルクリン検査(TST)判定のための再診が不要であることなどがある。IGRAの欠点は、採血が必要、検査室が必要、コストなどである。この研究では、2015年以降に結核の検査方法が変わったかを評価し、5~17歳の小児を診察する医師の結核検査選択の予測因子を検討した。
方法
2015年10月から2021年1月、ボストンの2つの医療システムで小児に実施したIGRAとTSTを対象とした。検査の種類と日付、年齢、使用言語、保険、検査を依頼した医療機関について記録した。検査結果(陽性、陰性、不確定・無効・境界線(IGRA検査の場合))を記録した。
結果
5~17歳の小児16,481人に20,267回の検査が実施された。2~5歳未満の小児4422人に5118回の検査が実施された。プライマリーケアクリニック78施設、専門クリニック216施設、入院施設5施設で実施された。全検査のうち,5歳以上の小児では5976回(29.5%)がTST,14,291回(70.5%)がIGRAを実施、2歳以上5歳未満では2325回(45.4%)がTST,2793回(54.6%)がIGRAを実施した。5歳以上の小児では、IGRAの割合は2015年10月の48.5%から2020年4月の最大98.0%に増加し(ピアソン相関係数=0.92、P<0.001)、2歳以上5歳未満では、IGRAの割合は2015年10月の7.2%から2020年8月の最大98.5%に増加した(ピアソン相関係数=0.96、P<0.001)。
5歳以上の小児では、年齢の増加とともにIGRAを受けるオッズは低下した。スペイン語またはその他の非英語言語、公的保険、入院患者または専門クリニックでの検査はIGRAを受けるオッズの上昇と関連していた。2歳から5歳未満の小児では、公的保険はIGRAを受けるオッズは低下した。年齢の上昇、私的保険と無保険、入院患者または専門クリニックでの検査は、IGRAを受ける高いオッズと関連していた。
考察
2015 年から 2021 年にかけて,結核有病率の低い環境において、2 ~ 17 歳の小児における IGRA 検査の割合が増加した。2歳から5歳未満の小児における検査の変化は、2018年に更新されたAAPガイダンスへの対応を示している可能性が高い。2歳から5歳未満と5歳以上の小児のいずれにおいても、入院患者や専門クリニックでじゃ、プライマリケアよりもIGRAを実施する確率が高い。
結論
我々の知見は、TSTが「引退」しつつあることを示唆している。プライマリケア医に対する教育および支援は、小児に対するIGRA検査への公平なアクセスを改善することができる。