小児感染症科医のお勉強ノート

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再発性UTIの予防に効果的な膣内プロバイオティクス投与

 小児でも、UTIを再発する例には時々苦労します。小児例では多くは、膀胱尿管逆流(VUR)などの尿路奇形や神経因性膀胱などの神経疾患が背景にあることが多いです。ST合剤を予防に用いますが、早々にST耐性菌が尿に保菌されるようになり、予防内服の効果が低くなります。 
 
 この論文は、「再発性尿路感染症(UTI)の予防における経口/膣内プロバイオティクス投与の効果:ランダム化二重盲検プラセボ対照試験」というタイトルで、再発性UTIの予防におけるプロバイオティクスの効果を評価しています。
 
 Chat GPTのまとめを、追記したり、訂正しています。
Effectiveness of Prophylactic Oral and/or Vaginal Probiotic Supplementation in the Prevention of Recurrent Urinary Tract Infections: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial.
Clin Infect Dis. 2024 May 15;78(5):1154-1161.
背景
 抗菌薬の広範な使用により、抗菌薬に対する耐性が広がっており、抗菌薬によらない戦略、特にプロバイオティクスによる予防が注目されています。本研究は、経口および膣内のプロバイオティクス投与が再発性UTIの予防に効果的かどうかを評価しています。
 
方法
- デザイン: ランダム化二重盲検プラセボ対照試験
- 対象: 過去に再発性UTIの履歴を持つ174名の閉経前女性
- グループ:
- G1: プラセボ(経口プラセボ+膣内プラセボ
- G2: 経口プロバイオティクス(経口乳酸菌とビフィズス菌+膣内プラセボ
- G3: 膣内プロバイオティクス(経口プラセボ+膣内乳酸菌)
- G4: プロバイオティクスの組み合わせ(経口プロバイオティクス+膣内プロバイオティクス)
- 追跡期間: 1年間
- 評価項目: 4ヶ月および12ヶ月のUTIの発症率、UTI再発までの期間、参加者による全体的な改善の評価
 
結果
- UTIの発症率(4ヶ月時点):
- G1: 70.4%
- G2: 61.3%
- G3: 40.9%
- G4: 31.8%
- UTIの再発回数(4ヶ月時点):
- G1: 平均2.1回
- G2: 平均1.63回
- G3: 平均1.06回
- G4: 平均1.07回
- 最初のUTI再発までの期間:
- G1: 平均69.3日
- G2: 平均71.9日
- G3: 平均123.8日
- G4: 平均141.8日
 

結論
- 膣内プロバイオティクス単独または経口プロバイオティクスとの併用は、再発性UTIの予防に効果的であることが示されました。
- プロバイオティクスの補給は、副作用が少なく、参加者によってよく耐えられました。
 
論文の重要点
- プロバイオティクスの使用は、再発性UTIの予防において有望な選択肢であること。
- 膣内プロバイオティクスの使用は、再発性UTIの発症率と再発回数の両方を有意に減少させることが示された。
- 経口および膣内のプロバイオティクスの組み合わせは、さらに効果的である可能性があること。
 
この論文は、再発性UTIの非抗菌薬治療としてのプロバイオティクスの有効性を支持するものであり、臨床的に重要な知見を提供しています。