小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

PICカテーテル先端は中心静脈に留置したほうが合併症が少ない

 PICカテーテルは小児では頻用されます。中心静脈にまで到達させることが難しいことも結構あります。中心静脈に到達しないと、合併症が多くなることを示した少し古い研究です。
(小児科医の本音としては、PICカテーテル先端は中心静脈に留置したほうが良いが、そんなにうまいこと行くとは限らない…)
 
Pediatric Peripherally Inserted Central Catheters: Complication Rates Related to Catheter Tip Location
Pediatrics. 2001;107(2):E28.
 
目的:小児において、PICカテーテル (peripherally inserted central catheter) の先端が留置された位置により、合併症が起きる頻度を比較する。
方法:シンシナティ小児病院において1994−98年の期間に、PICカテーテルを留置された小児を対象とした。患者背景、カテーテルの種類、留置期間、投与した薬剤、カテーテル関連の合併症を、前方視的に検討した。カテーテルの先端が、上大静脈・右房・横隔膜より中枢の下大静脈にある時には、中心静脈と判定した。それ以外の位置にある時には、非中心静脈とした。中心静脈と非中心静脈に先端がある場合の、合併症発症率を分析した。
結果:1266例のPICカテーテルが1053名の患者に挿入された。平均年齢は6.49歳(範囲0-45歳)であった。1266例のPICカテーテルの内、1096例(87%)が中心静脈、170例(13%)が非中心静脈に先端があった。合併症の頻度は、中心静脈で42例(3.8%)、非中心静脈で49例(28.8%)であった。患者の年齢、カテーテルのサイズ、性別、留置期間で調整した上で分析したところ、非中心静脈での合併症発症のオッズ比は、8.28 (95% CI: 5.11-13.43)であった。
結論:小児では、PICカテーテルを中心静脈に留置したほうが、合併症が少ない。
 
追加:
合併症の内訳としては、非中心静脈で静脈炎・閉塞・輸液漏れが特に多いことが分かります。
合併症
中心静脈
非中心静脈
P値
静脈炎
16 (1.5%)
17 (10.0%)
<.001
閉塞
19 (1.7%)
11 (6.5%)
<.001
輸液漏れ
1 (0.1%)
19 (11.2%)
<.001
機械的問題
4 (0.3%)
2 (1.2%)
.187
感染
2 (0.2%)
0
1.00

 

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