小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

精巣上体炎はドップラーエコーで診断

Acute Epididymitis in Greek Children: A 3-year Retrospective Study
Eur J Pediatr. 2008;167:765-9.
 
 急性陰嚢症は、精巣機能の温存をするために、迅速な診断と必要に応じた外科的治療が必要な疾患である。急性精巣上体炎(acute epididymitis)は、近年、報告が増加しており、早期に精巣上体炎と診断できれは、不要な外科手術を避けることができる。本研究では、ギリシア医療機関で急性陰嚢症を呈して受診した精巣上体炎の症例の診断と治療に関して後方視的に検討した。
 
 3年間に急性陰嚢症を主訴に受診した66例を対象とした。29例が急性精巣上体炎、8例が精巣捻転、12例が精巣付属器捻転、4例が陰嚢内膿瘍、5例が陰嚢腫脹、1例が嚢胞であった。精巣上体炎29例の年齢は2−13歳で、平均は8.4歳であった。罹患部は、右側が44.8%で左側が55.2%で、左右差は無かった。症状の期間は6時間から4日間で、症状のピークは2日目であった。尿培養とウイルス検査は全例で陰性であった。28例(96.6%)が、カラードップラー超音波検査で診断された。全例に抗菌薬投与が行われた。投与期間は1−12日間であった。中央値は7日間であった。2例に精巣炎を合併した。フォローアップで、精巣萎縮を来した症例は1例もなかった。精巣上体炎を反復したのは2例であった。12レでウロダイナミックス試験を実施し、9名で異常が認められた。
 
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 コメント:急性陰嚢症は、精巣捻転を除外することが必須である。精巣機能を温存できるゴールデンタイムは6−8時間とされており、いついかなるときでも迅速な評価が求められる。しかし、精巣上体炎は、精巣捻転より頻度が多く、重要な鑑別疾患である。本論文では、29例の精巣捻転のほぼすべての症例が、カラードップラーエコー検査で診断されており、非常に重要な検査である。
 従来、精巣上体炎は、「尿培養陽性・膿尿・WBC上昇」などが特徴とされていた。しかし、実際には、はほとんど無いことも、この研究から明らかになった。実際には、感染後反応(postinfection inflammaatory reaction)などもかなり多いと思われ、適正な抗菌薬使用が重要である。