小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

透析・臓器移植後・悪性腫瘍の小児患者はブドウ球菌菌血症のリスクが100倍以上になる

Staphylococcus aureus Bacteremia in Children Aged 5-18 Years— Risk Factors in the New Millennium 
J Pediatr. 2018;203:108-115.e3
 
デンマークから、小児の黄色ブドウ球菌菌血症のリスク因子に関する研究です。1,109,169名の5−18歳の小児を2000−2015年に追跡し、黄色ブドウ球菌菌血症を発症した症例を解析した。307例(3.7/10万人年)の黄色ブドウ球菌菌血症の発症があり, MRSAは8例(2.6%)であった。基礎疾患はなく、直近に医療機関受診歴がない症例は、37.1%を占めた。IRR (incidence rate ratios)(発症率のリスク)が最も高いのは、透析・血漿交換(367.2)、臓器移植後(149.5)、悪性腫瘍(102.9)であった。IRRが比較的高いのは、染色体異常(7.18)、アトピー性皮膚炎(4.89)、先天性心疾患(3.14)、外科手術(3.34)であった。早産児・両親の社会経済的状態は、黄色ブドウ球菌菌血症のリスクと関連しなかった。
 
 MRSAが少ないのは、さすがデンマークです。やはり医療曝露が多く、血管内デバイス留置の機会が多い患者に、黄色ブドウ球菌菌血症が生じやすい傾向は成人と同じです。
 

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