小児感染症科医のお勉強ノート

群馬県立小児医療センターで感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

細菌性骨髄炎と非感染性骨髄炎

 小児の細菌性骨髄炎(BO)は、黄色ブドウ球菌が多く、四肢の長管骨に多いことが特徴的です。成人では、椎体炎が多いことと対照的です。
 急性の経過で、血液培養などから原因菌がすんなり判明するケースは問題ないのですが、緩徐な経過で発症するケースもあります。そのような場合、非典型的な原因菌(抗酸菌や真菌など)を疑ったりするのですが、非感染性骨髄炎・骨炎(NBO)や慢性再発性多発骨髄炎(CRMO)と呼ばれる感染症が原因ではない骨炎・骨髄炎を鑑別に挙げる必要があります。
 BOとNBOの両方を診たことがあると、なんとなく違いが分かると思うのですが、どちらかしか診たことがないと、見落とす可能性があります。BOとNBOの特徴の違いを調べたドイツからの研究です。
 
 
Bacterial Osteomyelitis or Nonbacterial Osteitis in Children A Study Involving the German Surveillance Unit for Rare Diseases in Childhood
Pediatr Infect Dis J. 2017;36:451
 
背景
 細菌性骨髄炎(BO)は、小児科領域では一般的に認識されている疾患であるが、非感染性骨髄炎・骨炎(NBO)との鑑別が困難な場合が多い。本研究の目的は,この2つの疾患を区別し,非感染性骨髄炎・骨炎(NBO)の特徴を明確にすることである。
 
方法は
 ドイツの小児稀少疾患サーベイランス(Erhebungseinheit für Seltene Paediatrische Erkrankungen in Deutschland)を用いて、5年間の前向き研究を行った。BO(n = 378)または NBO(n = 279)と初診で診断された657人の患者を対象に、疫学的、臨床的、画像データを分析した。
 
結果
 BOは小児10万人あたり1.2人で、年少の男児(58%)に多く、NBOは10万人あたり0.45人であった。BOは、発熱(68%)、炎症反応上昇(82%)、局所の腫脹(62%)を呈する割合が高く、NBOよりも症状の経過が短かった。NBOは、全身状態が良好で(86%)、複数病変を有する症例が多かった(66%)。BOの病原体はStaphylococcus aureusが最も多く(83%)、MRSAは1例のみであった。合併症は、病関節炎、骨過形成、椎体骨折まで様々であった。
 
結論
 BOとNBOは、症状、関連する合併症、炎症反応に基づいて区別できる。NBOは、骨病変と疼痛を呈する小児患者(特に全身状態が良好で、炎症反応低値、椎体・鎖骨・胸骨に複数病変を呈する若い女児)では、考慮すべきである。
 
 
細菌性骨髄炎(BO)
非感染性骨髄炎・骨炎(NBO)
発生頻度
1.2/10万人
0.45/10万人
原因菌
なし
臨床症状
発症から診断まで短時間、発熱、発赤、炎症反応高値
全身状態良好
部位
1ヶ所
複数箇所(左右対称)
椎体、鎖骨、胸骨、下顎骨など
合併症
関節炎、膿瘍、筋炎
椎体病変、骨過形成

 

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pubmed.ncbi.nlm.nih.gov