米国の小児COVID-19ガイダンス
米国小児感染症学会(PIDS)から、小児のCOVID-19の予防と治療に関するコンセンサス・ステートメント(ガイダンス)が出ました。本文が長いので、4つの章がありますので、分けて紹介します。
今回は第1章です。
第1章:COVID-19重症化リスクが高い患者を特定するためのリスクの層別化
第2章:外来で症状の悪化を防ぐための早期治療の推奨
第3章:入院で症状の悪化、重症化、死亡を防ぐための推奨
第4章:曝露前、曝露後のCOVID-19予防の推奨
Guidance for prevention and management of COVID-19 in children and adolescents: A consensus statement from the Pediatric Infectious Diseases Society Pediatric COVID-19 Therapies Taskforce.
J Pediatric Infect Dis Soc. 2024 Mar 19;13(3):159-185.
セクション1:リスクの層別化
提言1.1:
提言1.2:
提言1.3:
提言1.4:
リスク層別化に関するエビデンスのまとめ
年齢
複雑な基礎疾患
事前免疫
免疫不全
血液疾患
肥満と糖尿病
心臓および肺疾患
消化器疾患
慢性腎臓病
神経発達症および精神疾患
1歳未満は、そんなリスクでは無いように見えますが。
Toxin陰性のC. difficileは治療対象?
治療したほうが死亡率が低い。
下痢じゃない人に検査しても保菌を検出するだけなので、臨床症状からCDIの可能性が高い人に対してのみ、検査をすることが重要。
Clinical Outcomes and Management of NAAT-Positive/Toxin-Negative Clostridioides difficile Infection: A Systematic Review and Meta-Analysis.
MRSAに接触感染対策止める??
接触感染対策CPは、ガウン、手袋などを装着する感染対策です。耐性菌を保菌していたり、下痢症状がある患者などに適応されます。医療従事者にとっては、個人防護具PPEの着脱が面倒であり、コストもかかります。下痢については仕方ないと思うのですが、耐性菌に関しては、しっかり手指衛生ができていれば、接触感染対策は解除できるのでは?という発想で、いくつか研究があります。多くは、対策をやめても、MRSA伝播が増えなかったというものです。
小児に関しては、成人よりもケアが濃密に必要であり、泣いたり、鼻をこすったり(ほじったり?)、伝播のリスクも高そうなので、PICU、NICUなどでは接触感染対策は継続するのが一般的です。今回は、NICUを除く病棟(ICU含む)で接触感染対策をやめてみた研究です。
要点
・MRSA感染症患者、保菌者に対して、接触感染対策をやめても、院内発症MRSA感染症は増えなかった。
・心臓外科術前患者のMRSA保菌率も変わらなかった。
・全体として、接触感染対策を行う割合が減った。
・CP止める条件としては、手指衛生がちゃんとできていることですよ。
Discontinuation of Contact Precautions for Methicillin-resistant Staphylococcus aureus in a Pediatric Healthcare System.
J Pediatric Infect Dis Soc. 2024 Feb 26;13(2):123-128.
背景
成人患者を対象とする多くの病院では、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染・保菌者に対する接触予防策(CP)を廃止しているが、廃止に伴う悪影響は報告されていない。小児医療施設においても、同様に廃止してよいかは、不明である。
方法
2019年9月に3つの小児医療施設において、新生児集中治療室を除く全病棟で、MRSAに対するCPを中止した。全入院患者を対象に、院内発症MRSA感染のサーベイランスを行った。2017年9月ー2023年8月までの経過を検討した。
結果
766020 patient-daysのサーベイランス期間に、234件の院内発症MRSA感染症が発生した。CP中止後、発生率のITS slope(0.06、95%CI:-0.35~0.47、P=0.78)、intercept(0.21、95%CI:-0.36~0.78、P=0.47)に変化はなかった。これらのMRSA 感染症の総発生率に変化はなかった(発生率比=0.98、95%CI:0.74~1.28)。心臓手術前にスクリーニングを受けた患者におけるMRSA鼻腔内保菌率にも変化はなかった(比=0.94、95%CI:0.60~1.48)。接触感染対策を実施した頻度は、14.0%減少した。
結論
MRSAを保菌する小児患者に対してCPを中止しても、4年間のMRSA感染症の増加と関連していなかった。本研究は、同様の小児医療施設において、水平感染防止対策が良好に遵守されている状況下で、MRSAに対するCPの中止を検討することを支持するものである。
新型コロナウイルス迅速抗原検査が偽陽性になる人の特徴
ウイルス迅速抗原検査は、日常診療で頻用される検査です。新型コロナウイルス以外にも、インフルエンザ、RSウイルスなど、毎日のように使用します。
この検査は、一般的に「感度が低く、特異度が高い」ので、偽陰性(感染しているけど検査陰性になる人)が多く、偽陽性(感染していないけど検査陽性になる人)は少ないのが特徴です。
今回、新型コロナウイルス迅速抗原検査で、偽陽性が継続的にみられた人の特徴が報告されました。
要点
・新型コロナウイルス迅速抗原検査で、偽陽性になりやすいのは、女性・自己免疫疾患のある人です。
Persistent False Positive Covid-19 Rapid Antigen Tests.
N Engl J Med. 2024 Feb 22;390(8):764-765.
SARS-CoV-2に対する迅速抗原検査は、急性感染の診断に有効な手段である。
我々は、SARS-CoV-2の迅速抗原検査とRT-PCR検査をペアで受けた2つのコホート研究をもとに、研究を行った。偽陽性は、偶発的偽陽性(少なくとも1回の迅速抗原検査で陰性を示した参加者)と持続的偽陽性(少なくとも5日間の迅速抗原検査で陽性を示し、迅速抗原検査で陰性を示さなかった参加者)に分類した。
11,297人のうち、1.7%に少なくとも1回の迅速抗原検査の偽陽性が認められた。偽陽性191人のうち、13人は持続的偽陽性だった。持続的偽陽性の参加者のほとんどは、女性で(13人中12人)、Quidel QuickVue迅速抗原検査を使用していた(13人中12人)。持続的偽陽性の参加者は、自己免疫疾患の有病率が高かった(13人中6人 vs 178人中10人;オッズ比、14.4;95%信頼区間、3.2~59.9)。
SARS-CoV-2の検査は一般的に症状のある患者に対して行われるため、偽陽性の結果は臨床的には認識されない可能性がある。感染後や症状がないにもかかわらず、持続的な抗原検査陽性を認めた場合、この持続的偽陽性で説明可能と考えられる。偽陽性が持続し、自己免疫疾患の既往歴がある患者には、他社の迅速抗原検査で再検査を行うことが良いと考えられる。