小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

新生児の敗血症に血培嫌気ボトルは必要??

 今年7月に、血液培養ボトルの出荷制限が通知されて、日本中の医療機関感染症部門が騒然としました。血液培養は、重症感染症において必須の検査で、この検査は正しい感染症診療の基本になります。

 そこで、血液培養を取らなくても良いケースを改めて見直したりして、ボトル使用量を減らしたり対応していました。10月ころから回復ということで一安心しています。

www.bdj.co.jp

 

 本日紹介する論文は、「Utility of Anaerobic Blood Cultures in Neonatal Sepsis Evaluation(新生児の敗血症評価における嫌気血液培養の有用性)」です。一般には、消化管穿孔・腹膜炎などでなければ、偏性嫌気性菌が血培から発育することは稀なので、嫌気ボトルは不要なはずですが、改めて検討しました。

 嫌気ボトルのみから有意な菌が検出されているケースがかなり多く、血培ボトルが不足しているというような特殊な状況でなければ、両方採取することも必要なのではと感じます。

 

要点

・17.6%の症例で、嫌気ボトルからのみ病原体が検出された。

大腸菌黄色ブドウ球菌、CNSなどが嫌気ボトルのみに発育した症例があった。

Utility of Anaerobic Blood Cultures in Neonatal Sepsis Evaluation

J Pediatric Infect Dis Soc. 2024 Aug 24;13(8):406-412.

要約

背景
新生児集中治療室(NICU)での敗血症評価の一環として、嫌気血液培養ボトルが使用されることはまれです。本研究の目的は、嫌気血液培養ボトルが、NICUでの敗血症評価において、臨床的に意義のある病原体の検出や、好気培養ボトルよりも早期に病原体を同定できるかどうかを調査することである。

 

方法
2015年8月から2023年8月まで、NICUに入院した乳児から採取された血液培養の後方視的コホート研究を実施しました。標準的な方法として、2mLの血液を好気性および嫌気性の培養ボトルに分注し、両方のボトルで病原体が発育するかどうか、またどちらが先に陽性になるかを比較した。

 

結果
全体で4599件の血液培養が行われ、そのうち5.8%(265件)が陽性でした。その中で182件は、好気性と嫌気性の両方のボトルを用いて病原体が回収されました。32件(17.6%)では嫌気性ボトルのみから病原体が回収され、嫌気性ボトルのほうが早期に陽性を示したケースもありました。主な病原体には、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌Escherichia coli、およびStaphylococcus aureusが含まれ、嫌気性ボトルが早く陽性になったケースでは抗菌薬の変更が早期に行われたことも確認されました。

 

結論
嫌気血液培養ボトルにも採取することで、好気ボトルでは検出されない病原体の同定や、より早期に病原体を同定できる可能性があることが示されました。

 

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov