先日、小児感染症の集まりで、全国の小児病院や大学病院での広域抗菌薬(カルバペネム系)の使用量が比較された資料をみました。
全般的には、小児病院では広域抗菌薬の使用量が少なく、大学病院で多い傾向がありました(入院している患者層の影響は大きいとは思います)。個人的な感想としては、抗菌薬適正使用プログラム(ASP)がうまく行っている小児病院では、なかなかこれ以上の削減は難しく感じます。一方で、大学病院などでは、削減の余地が大きい印象がありました。
今回の研究は、米国の大学病院(やはり広域抗菌薬が多い)で、小児専用のASPを立ち上げた後の、効果をみたものです。日本でも全国の大学病院に1名くらいは小児感染症指導医が配置されるようになると良いと思いました。
要点
・成人と小児の入院患者がいる大学病院で、小児のASPを導入(常勤の小児感染症の専門家)したら、広域抗菌薬・バンコマイシンの使用量が減少した。
Pediatric Antimicrobial Stewardship Programs Reduce Antibiotic Use at Combined Adult-Pediatric Hospitals.
Clin Infect Dis. 2024 Aug 16;79(2):321-324.
この研究は、成人と小児が入院する総合病院における小児抗菌薬管理プログラム(ASP)の導入が、抗菌薬使用量の削減に与える影響を評価したものである。具体的には、2つの大学病院(ミシガン大学病院とデューク大学病院)で、小児専門のASPを導入し、小児および成人の抗菌薬使用の変化を比較した。
結果
- 小児の抗菌薬使用量が減少: 小児ASP導入後、小児における抗菌薬使用量は有意に減少した。ミシガン大学病院では、広域抗菌薬使用量が15%、バンコマイシン使用量が32%減少した。
- 成人の抗菌薬使用量との比較: 同期間に成人の抗菌薬使用量も減少したが、小児に比べてその減少幅は小さく、ASP導入が小児に特に効果的であることが示された。
- ベンチマークとの比較: ミシガン大学病院の小児の抗菌薬使用量は、研究開始時には他の小児専門病院よりも高かったが、研究終了時には同等またはそれ以下にまで減少した。
結論
この研究は、小児専門のASPが成人・小児が入院する総合病院においても、小児の抗菌薬使用量を効果的に削減できることを示している。また、小児感染症の専門医や薬剤師が配置されることが、適切な抗菌薬使用の促進に不可欠であると強調している。この結果を踏まえ、小児患者のためのASPの強化が推奨される。
本研究の小児ASPとは
常勤の小児抗菌薬適正使用を担当する医師を配置した→その後、薬剤部のサポートが加わった。