今年も多くのRSウイルス感染の症例を経験しました。一般的には、早産児や基礎疾患があるお子さんが重症化しやすいのですが、特にリスクの無い赤ちゃんでも、呼吸不全まで至ることもあります。様々な予防手段が出ているものの、重症化に関して、母親のリスクを検討した論文です。
要点
・母親の喫煙は、RSV重症化のリスクを上げる
・母乳育児は、RSV重症化のリスクを下げる
Maternal Risk Factors for Respiratory Syncytial Virus Lower Respiratory Tract Infection in Otherwise Healthy Preterm and Term Infants: A Systematic Review and Meta-analysis.
Pediatr Infect Dis J. 2024 Aug 1;43(8):763-771.
目的
本研究の目的は、健常な早産児および正期産児におけるRSウイルス(RSV)による下気道感染症(LRTI)のリスクに影響を与える母親のリスク因子を特定し、その影響を体系的に評価することである。
方法
RSV-LRTIに関連する母親のリスク因子を評価するために、系統的文献レビューとメタアナリシスが実施された。PubMed、Embase、およびCochrane Libraryのデータベースを用いて、RSV/LRTIに関する研究を検索し、基準を満たした20の研究が最終的なレビューに含まれた。母親のリスク因子とRSV-LRTIまたはRSVによる入院(RSVH)の関連を調査した。
結果
妊娠中の喫煙は、RSVHリスクを2.01倍に増加させた(95% 信頼区間:1.52–2.64)。一方、母乳育児は、RSVHのリスクを0.73倍に低下させることが確認された(95% 信頼区間:0.58–0.90)。他のリスク因子として、母親の教育水準が低いこと、帝王切開が挙げられたが、統計的な有意差を示さなかった。
考察
本研究で、母親の喫煙や母乳育児などの介入可能なリスク因子が、乳児のRSV-LRTIおよびRSVHリスクに大きく関連することが明らかになった。母親に対して、妊娠中に喫煙しないことや母乳育児を奨励することが、RSV-LRTIのリスクを低減させるための有効な方法であると考えられる。