小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

人工涙液によるカルバペネマーゼ産生菌緑膿菌のアウトブレイク

 

  人工涙液(点眼薬)に、カルバペネマーゼ産生緑膿菌が混入していたために、アウトブレイクが発生した報告になります。7%が死亡、22%が眼球摘出となっており、感染症を発症すると予後が悪いです。(おそらく販売数は多いので、感染症を発症してしまう割合は少ないのだと思いますが)

 インドで生産された製品が、輸入業者を通じて全米で販売されたそうです。

 

Multistate Pseudomonas Outbreak Investigation Group. Extensively Drug-Resistant Pseudomonas aeruginosa Outbreak Associated With Artificial Tears.

Clin Infect Dis. 2024 Jul 19;79(1):6-14.

 

 

背景

 カルバペネマーゼ産生カルバペネム耐性緑膿菌(CP-CRPA)は、広範な抗菌薬に耐性を示す細菌であり、特に致死率の高い感染症と関連しています。本研究では、米国でのCP-CRPAのアウトブレイクの原因を調査しました。

 

方法

 2022年1月1日から2023年5月15日に、米国内の患者からPseudomonas aeruginosa ST1203で、カルバペネマーゼ遺伝子blaVIM-80およびセファロスポリナーゼ遺伝子blaGES-9を持つ症例が初めて確認された。多くの症例が発生したため、急性期医療施設でケースコントロール研究を実施し、原因となる曝露を評価し、製品の細菌汚染を調査しました。

 

結果

 18州で81例の患者を特定した。そのうち27例は、監視培養から特定された。臨床検体の培養から特定された54例の患者のうち、4例(7%)が培養採取後30日以内に死亡し、18例の眼感染症患者のうち4例(22%)が眼球摘出を受けた。ケースコントロール研究では、人工涙液の使用が症例と関連していることが示された(OR、5.0; 95% CI、1.1–22.8)。患者の87%が人工涙液の使用を報告し、うち77%が特定のブランドAを使用していた。開封済みおよび未開封のブランドAの点眼液のボトルから細菌が分離され、患者の分離株と遺伝的に関連していた。製造工場の検査で、汚染源となりうる要因が特定された。

 

結論

 医療製品によるカルバペネマーゼ産生細菌のアウトブレイクは、これまでアメリカでは前例がない。このアウトブレイクの臨床的影響を考慮すると、OTC製品の輸入業者に対する要件を再検討する必要性がある。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov