ある薬物にアレルギーがある患者さんに対して、その薬物を投与しないことは、医療における常識ですが、「アレルギーがある」こと自体が間違っていることがあります。
例えば、アルコールアレルギーと書いてあっても、「アルコール綿でゴシゴシ擦ったときに少し赤くなっただけ」とか。(誰でもそうなりますよね…)
抗菌薬アレルギーに関しては、ペニシリンが有名です。しかし、ペニシリンによる本当のアナフィラキシーは非常にまれです。使用して10日目くらいで見られる、全身性の皮疹はよくあります。しかし、世の中には、それ以外にも、「ペニシリンを使って下痢が出た」「ペニシリンを使っていたら、(突発性発疹の)発疹が出た」「ペニシリンを使っていたら、吐いた」などを理由にペニシリンアレルギー表示がされていることがあります。(当然、抗菌薬を使えば下痢は起きますし、昔は子供の熱に抗菌薬が安易に処方されており、ウイルス性発疹が薬疹と思われたことも多かったです。)
そして、電子カルテシステムに入力されると、見直されることは、ほぼありません。
この論文は、「ペニシリンアレルギーと表示された」小児が気道感染を罹患した時、抗菌薬の処方がどうなるか→どのようなデメリットが起きるかを解析した研究です。
要点
・ペニシリンアレルギーと表示されると、広域抗菌薬・第2選択の抗菌薬が処方されやすい
・ペニシリンアレルギーと表示されると、抗菌薬の副作用による再診が多い
・ペニシリンアレルギーの表示がある場合、どのようなアレルギー症状であったのかを確認して、「不必要なアレルギー表示は外す」ようにしたほうが良い。
Impact of Penicillin Allergy Labels on Children Treated for Outpatient Respiratory Infections.
「不必要なアレルギー表示を外す」と一言で言っても、なかなか個人の努力のみでは難しいですし、もし何らかのアレルギー反応が出た場合、医療機関としてどう責任を持つか、アレルギー表示を解除した医療者に責任を負わせるのかという問題が出てきます。
これは、今後、抗菌薬適正使用チーム(AST)が介入していってもよい分野かと思っております。