市中肺炎(CAP)は、世界では幼児の主要な死因です。米国では、小児1万人あたり約15.7人が入院し、小児入院の2番目に多い理由となっています。日本でも、同様で、ほとんどが外来管理したり、入院しても比較的早期に改善しますが、患者数は多いです。
小児CAPの観察研究や臨床試験を行う際、何をアウトカム(臨床指標)を設定するかは、かなりのばらつきがあります。一般的に使用されるアウトカムは、入院期間や再診率など非特異的なもの(肺炎の改善とは直接関係あるとは言い難い)であったり、敗血症や死亡などごく一部の小児にしか発生しない(先進国で小児CAPで亡くなることはほぼ無い)ものであったりすることが多いのが問題でした。客観的なアウトカム指標に関するコンセンサスを作ってみましたという研究です。
Developing Consensus on Clinical Outcomes for Children with Mild Pneumonia: A Delphi Study. J Pediatric Infect Dis Soc. 2023 Feb 27;12(2):83-88.
背景
小児抗菌薬臨床試験におけるアウトカムのコンセンサスがないことは、研究の統一性と臨床応用の大きな障壁となっている。我々は、軽症の市中肺炎(CAP)の小児を対象とした臨床試験におけるアウトカム指標について、専門家のコンセンサスを得ることを目指した。
方法
デルファイ法を適用し、多職種の専門家委員会が、小児の軽症 CAP における臨床効果と治療失敗の様々な要素の重要性を評価した。第1ラウンドでは、委員が自由回答で追加のアウトカムを提案した。その後、合意形成のラウンドに追加された。第2ラウンドと第3ラウンドでは、パネリストに事前の回答と、各項目の統計が提供された。合意形成は、70%以上の一致で定義された。
結果
専門家委員会は、治療の成功と失敗の評価を、開始後3日目(中央値)で行うべきであると決定した。発熱、努力呼吸、呼吸困難、頻呼吸(解熱時)、経口摂取量、活動性の完全または大幅な改善は、適切な臨床反応(治療成功)の構成要素として含まれるべきとした。発熱、呼吸困難、経口摂取量の減少が持続または悪化は、治療失敗の構成要素に含まれるべきとした。また、輸液、酸素投与、高流量鼻カニューレ酸素療法(HFNC)が必要、抗菌薬変更などの介入も、治療失敗のアウトカムとして考慮されるべきであるとした。
結論
この多職種専門家委員会のコンセンサスによって決定された治療成功・失敗のアウトカムは、小児のCAP研究に使用することができ、臨床研究に役立つ客観的なデータを提供することができると考えられる。
治療成功の指標
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・治療開始3日以内に、発熱、努力呼吸(鼻翼呼吸、呼吸困難、陥没呼吸)、経口摂取量、活動性の大幅な改善があること
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治療失敗の指標
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・治療開始3日後の時点で、発熱、努力呼吸、経口摂取量の減少が継続または増悪していること
・治療開始3日以内に、新規に輸液、酸素投与、他の抗菌薬を開始したり、複雑性肺炎を発症すること
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