小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

気道感染を起こすウイルスの迅速検査キットの感度・特異度のまとめ

 先日、SARS-CoV-2の迅速抗原検査キットの感度と特異度をまとめました。他の病原体に関してはどうなのか気になって、調べてみました。インフルエンザや溶連菌は、メタアナリシスがありましたが、その他のウイルスは報告が少なかったです。
 日本からの報告も多く、日本がかなり迅速抗原検査をよく使う国だと感じます。

 

インフルエンザ

 結構有名なメタアナリシスです。小児のほうがちょっと感度が高いです。インフルエンザBの感度が低いことも有名です。

 

感度

特異度

合計

62.3%

98.2%

成人のみ

53.9%

 

小児のみ

66.6%

 

インフルエンザA

64.6%

 

インフルエンザB

52.2%

 

(Ann Intern Med. 2012 Apr 3;156(7):500-11.)

 

ヒトメタニューモウイルス 

 抗原検査キットの検討。山形と仙台の3つの小児科クリニックで実施した研究です。15歳以下の小児を対象にしています。発症5日目以降は、感度が落ちてくることが分かります。

発症からの日数

感度

特異度

合計

82.3%

93.8%

1日目

86.7%

90.9%

2日目

90.5%

91.1%

3日目

100%

100%

4日目

83.3%

94.7%

5日目以降

50%

95.8%

(J Clin Microbiol. 2009 Sep;47(9):2981-4.)

 

RSウイルス

 米国の教育病院のERで行った検討です。小児が対象です。

 

感度

特異度

合計

79.4%

67.1%

月齢 <2ヶ月

78.3%

69.5%

月齢 ≧2ヶ月

81.7%

59.5%

 

 

 

(Emerg Med J. 2014 Feb;31(2):153-9.)

 

アデノウイルス

アデノウイルスも発症5日目以降は、感度が低下します。

 

感度

特異度

合計

72.6%

100%

発症1−4日目

80.4%

 

発症5−11日目

61.5%

 

(J Clin Microbiol. 1999 Jun;37(6):2007-9.)

 

 

小児でのスタディでは下記のような報告がありました。

 

感度

特異度

合計

89.2%

98.0%

 性別、年齢、体温、発症後の日数、アデノウイルスの血清型で、有意差なし。
滲出性扁桃炎では感度が高く(95.0%)、咽頭炎では感度が低い(78.9%)。

(Pediatr Infect Dis J. 2010 Mar;29(3):267-9.)

 

A群溶連菌

105研究、58,244名を対象にしたメタアナリシス。小児を対象にしたレビューです。かなり感度が高いですね。

 

感度

特異度

Total

85.6%

95.4%

(Cochrane Database Syst Rev. 2016 Jul 4;7(7):CD010502. )

 

 病原体により感度は異なりますが、およそ70−80%というところです。もちろん、使用する抗原検査キットによる差異もあるでしょうし、正確さには限度があります。また、多くの研究が、PCR陽性をGold standardにしているので、本当の感染者に対する感度は、更に低いことになります。