小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

新生児の腸腰筋膿瘍

 腸腰筋膿瘍は、小児にはまれな病態です。成人では椎体炎が波及して腸腰筋膿瘍を形成することがあります。新生児の腸腰筋膿瘍となるとさらに稀で、ケースシリーズもなく、症例報告が中心です。
 日本からの症例報告に、17例のまとめをつけていただいている報告です。
 
Neonatal iliopsoas abscess.
Pediatr Int. 2012 Oct;54(5):712-4. 
症例は日齢22の男児。在胎38週、出生体重2915gで出生した。
日齢22に、左大腿部の腫脹に両親が気がつく。CTで右腸腰筋から大腿に至る腫瘤を指摘された。白血球と炎症反応の上昇が認められ、アンピシリンを開始した。発熱もなく哺乳も良好であった。右鼠径部と大腿中央部が腫脹し、発赤していた。入院後に、穿刺を行い、その後、外科的ドレナージを行った。培養は肺炎球菌だった。アンピシリンを継続した。MRIで股関節に不完全脱臼を認め、化膿性関節炎からの波及が疑われた。




 

 小児の腸腰筋膿瘍に関するまとめはあまりありません。新生児だけで17例をまとめてくださっていますが、多くは発熱がなく、局所の腫脹で気が付かれるようです。多くの症例で外科的ドレナージが必要になっています。
 膿瘍形成の原因となった病態は、不明が多く、一部に、カテーテル感染、尿路感染、筋肉内出血などがあるようです。