小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

小児の口囲皮膚炎にカルシニューリン阻害薬

 口囲皮膚炎という、口の周りを中心に皮膚炎を起こす病気があります(写真)。成人の女性に多い病気です。はっきりした原因は分かりませんが、ステロイド軟膏を塗ることなどが関係しているという報告もあります。

 成人では、皮膚のケアに加えて、標準的な治療がカルシニューリン阻害薬の局所療法になります。日本では、タクロリムス(プロトピック)になることが多いと思います。
 一方、小児では稀な病気です(私もあまり経験がありません)。小児においても、カルシニューリン阻害薬で良いのかという検討をした報告です。やはり、寛解率が高く、有用な治療薬になりそうです。多くの小児科医にとっては、カルシニューリン阻害薬はあまり使用経験が多くないので、皮膚科の先生にお願いしたほうが良いのかなという気はします。
 
Topical calcineurin inhibitors for pediatric periorificial dermatitis 
J Am Acad Dermatol . 2020 Jun;82(6):1409-1414.
 
背景
 小児の口囲皮膚炎に対して、カルシニューリン阻害薬の局所療法(TCI)の効果に関するデータは不足している。
 
目的
 小児の口囲皮膚炎に対してTCIの臨床的有用性を評価する。
 
方法
 後方視的に、小児の口囲皮膚炎に対してTCIを行った症例を検討した。フォローアップは電話で行い、欠損データを補足した。
 
結果
 合計132例の小児患者が含まれた。年齢の中央値は4.2歳(IQR 2.3-8.2歳)。フォローアップ期間の中央値は5.2ヶ月(IQR 2.1-11.7ヶ月)であった。72例の症例のフォローアップデータが得られた。そのうち、48例(67%)の症例はTCIのみで加療された、12例(16.7%)はTCIと局所メトロニダゾール療法、9例(12.5%)はTCIと抗菌薬の全身投与が行われた。完全寛解は、TCIのみ68.8%、TCI+メトロニダゾールで75%、TCI+全身抗菌薬で77.8%の症例で得られた。副作用は稀で、あったとしても軽症であった。
 
結論
 TCIは、小児の口囲皮膚炎に対して有効な治療法である。忍容性も高いことが示された。