小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

4回目ワクチンはファイザーそれともモデルナ??

 4回目のワクチン接種が、急ピッチで進む中、4回目はファイザーかモデルナどちらが良いか、迷っている方も多いと思います。
 イギリスから、4回目接種後の免疫反応を検討した論文が出ました。残念ながらオミクロン株に対する有効性までは、検討できていませんが、1−3回目をファイザーで接種した後、4回目をファイザーまたはモデルナで比較しました。
 各種データが詳しく載っていますが、これから4回目を接種する多くの日本人にとって重要な項目のみピックアップしました。
要点
・4回目接種→14日後で、抗体価およびT細胞の反応性は向上する
ファイザーもモデルナもおそらく大きな差はない
 (ちょっとだけモデルナの方がよく見える)
・3回目接種後より、更に数値は上昇する
・ただし、オミクロンに対する効果までは分からない
 
ファ→ファ→ファ→ファ
ファ→ファ→ファ→
抗体価の上昇
(液性免疫)
11.14倍
(9.21-13.47)
12.30倍
(9.39-16.11)
T細胞の反応性の上昇
(細胞性免疫)
4.14倍
(1.04-16.54)
6.08倍
(3.86-9.56)
 
 
Safety, immunogenicity, and reactogenicity of BNT162b2 and mRNA-1273 COVID-19 vaccines given as fourth-dose boosters following two doses of ChAdOx1 nCoV-19 or BNT162b2 and a third dose of BNT162b2 (COV-BOOST): a multicentre, blinded, phase 2, randomised trial
Lancet Infect Dis . 2022 Aug;22(8):1131-1141.
 
背景
 一部の高所得国では、COVID-19ワクチンの4回目の接種が実施している。しかし、4回目接種の臨床的必要性、効果、最適な時期と用量は依然として不明である。我々は、COVID-19に対する4回目ブースター接種の安全性、免疫反応、免疫原性を調査することを目的に本研究を実施した。
 
方法
 COV-BOOST試験は、英国の18施設でCOVID-19ワクチン7種を3回目のブースターとして投与する多施設共同盲検第2相無作為化比較試験である。この研究では、ブースター接種3回目にBNT162b2(ファイザー・バイオンテック)を接種した参加者を登録した。4回目接種は、BNT162b2(30 μg 0.30 mL:通常量)またはmRNA-1273(Moderna:50 μg 0.25 mL:半量)のいずれかに1:1に無作為に割付した。主要評価項目は、安全性と免疫反応、および免疫原性(ELISA法による抗スパイク蛋白IgG力価、ELISpot法による細胞性免疫応答)とした。免疫原性は、3回目の投与から28日後と4回目の投与から14日後、および4回目の投与から0日目と14日目の相対比較で検討した。
 
結果
 2022年1月11日から1月25日の間に、166人が対象となり、無作為に割り当てられた。4回目接種としてBNT162b2(n=83)またはmRNA-1273(n=83)のいずれかが投与された。参加者の年齢中央値は70.1歳(IQR 51.6-77.5)、166人中86人(52%)が女性、80人(48%)が男性であった。3回目と4回目の投与間隔の中央値は208.5日(IQR203.3-214.8)であった。BNT162b2またはmRNA-1273のブースター投与後、最も多く見られた局所の有害事象は疼痛で、最も多く見られた全身性の有害事象は倦怠感であった。BNT162b2の4回目接種後に報告された重篤な有害事象3例は、いずれもワクチンとの関連はなかった。BNT162b2群では、3回目接種後28日目の抗スパイク蛋白IgG力価の平均は、23325 ELU/mLで、4回目接種後14日目に37460 ELU/mL(31996-43 857)に有意に増加した。(平均1.59倍、95% CI1.41-1.78)。3回目接種後28日目(平均25317 ELU/mL)からmRNA-12734回目接種後14日目(54936 ELU/mL)まで、抗スパイク蛋白IgG力価の有意な増加が見られた。(平均2.19倍(1.90-2.52))であった。4回目接種前(0日目)から投与後(14日目)までの抗スパイク蛋白IgG力価の変化は、BNT162b2群とmRNA-1273群で12.19倍(95%CI 10.37-14.32)および15.90倍(12.92-19.58)であった。T細胞応答も4回目接種後に向上した(野生株に対して4回目接種前と接種後の変化は、BNT162b2群で7.32倍[95%CI 3-24-16-54]、mRNA-1273群で6.22倍[3-90-9-92]であった)。
 
結論
 mRNAワクチンの4回目接種は、忍容性が高く、細胞性免疫と液性免疫を増強する。4回目接種後のピークは、3回目接種後のピークと同様であり、3回目よりもより向上していた。
 
 
SARS-CoV-2抗体価 (ELU/mL)
1−3回目すべてファイザーワクチンの対象者(n=64)
 
4回目 ファイザー
4回目 モデルナ
3回目接種 28日後
26982
29161
4回目接種 当日
3761
4769
4回目接種 14日後
42949
58043
4回目当日→14日後
上昇倍率
11.14
(9.21-13.47)
12.30
(9.39-16.11)
 
野生株に対する細胞性免疫反応 (spot forming cells per 10^6 PBMCs)
1−3回目すべてファイザーワクチンの対象者(n=64)
 
4回目 ファイザー
4回目 モデルナ
3回目接種 28日後
65.04
108.90
4回目接種 当日
19.93
30.20
4回目接種 14日後
84.87
241.91
4回目当日→14日後
上昇倍率
4.14
(1.04-16.54)
6.08
(3.86-9.56)

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov