小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

オミクロン株に対するファイザーワクチンの効果(小児)

 第6波(オミクロンの流行)では、小児COVID-19患者数が増加し、重症例も増えています。一方で、小児(5-11歳)へのワクチン接種は認可されたものの、未だに接種率が低いのが現状です。

 その原因として、保護者が「子供のコロナは軽症と思っている」ことと、ワクチンの有効性や安全性に対する懸念があるのだと思います。

 今回紹介する論文は、オミクロン流行期に、小児に対するファイザーワクチンの有効性を検討した論文です。テストネガティブ研究という、RCTよりはエビデンスレベルの低い研究にはなりますが、現実世界でのワクチンの有効性を判断する良い根拠になると思います。

 

要点

・デルタとオミクロンが流行した時期に、COVID-19と診断された5歳以上の小児1185名が対象。対照群(COVID-19陰性)の1167名と比較した。

・12-18歳:オミクロン流行期のワクチン効果は、入院に対して40%、重症化に対して79%。(感染自体はあまり防ぐことはできないが、重症化は防ぐ)

・5-11歳:入院を予防する効果は68%

 

BNT162b2 Protection against the Omicron Variant in Children and Adolescents

Price AM, et al. N Engl J Med. 2022. PMID: 35353976

 

背景

 新型コロナウイルスSARS-CoV-2)B.1.1.529(omicron)変異株の拡散により、米国ではCOVID-19による入院が増加している。小児において、ワクチンの免疫回避やワクチンの有効性が保たれる期間についての懸念が生じている。

 

方法

 症例対照・テストネガティブデザインを用いて、COVID-19による入院例、重症例(life supportを受けた、または死亡に至った症例)に対するワクチンの有効性を評価した。2021年7月1日-2022年2月17日まで、米国23州の31病院でCOVID-19を発症した症例患者とCOVID-19を発症していない対照患者を登録した。12-18歳の患者についてはワクチン接種からの経過時間、5-11歳および12-18歳の患者についてはB.1.617.2(デルタ)(2021年7月1日-12月18日)およびオミクロン(2021年12月19日-2022年2月17日)の流行と一致する時期で、発症前14日よりまえにワクチン2回接種(BNT162b2ワクチン2回)の確率を比較しワクチン効果の推定を行った。

 

結果

 COVID-19患者1185人(1043人[88%]がワクチン未接種、291人[25%]がlife supportを受け、14人が死亡)と対照患者1627人を登録した。デルタ流行期間において、12-18 歳における COVID-19 入院に対するワクチン効果は、接種後 2-22 週で 93%(95% 信頼区間 [CI], 89-95)、23-44 週で 92%(95% CI, 80-97)であった。12-18 歳(接種後日数の中央値162 日)において、オミクロン流行期のワクチン効果は、COVID-19 による入院に対して 40%(95% CI,9-60)、重症 COVID-19 に対して 79%(95% CI,51-91)、非重症COVID-19 に対して 20%(95% CI,-25-49)であった。5-11歳における入院に対するワクチンの有効率は68%(95%CI,42-82,接種後間隔中央値,34日)であった。

 

結論

 BNT162b2ワクチン接種により、5歳から11歳の小児におけるオミクロンによる入院リスクは3分の2に減少した。12-18歳では、2回の接種でオミクロンによる入院の予防効果はデルタによる入院の予防効果よりも低かったが、ワクチン接種により、どちらも重症化も防ぐことができた。