小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

小児の血液培養、最適な採血量のまとめ

 小児の血液培養の採血量とセット数は、小児救急医療に関わる医師にとって、避けては通れない問題です。
 小児から2セット採取ことの難しさ、採血量が多いと(特に新生児で)貧血の原因になるなどの問題があります。各論文での推奨用量が一覧になっており、参考になります。
 
The correct blood volume for paediatric blood cultures: a conundrum?
Clin Microbiol Infect. 2020 Feb;26(2):168-173.
 
背景
 菌血症(BSI)は、小児における後遺症・死亡の主要な原因である。迅速かつ正確な診断のために、血液培養(BC)が必須の検査となっている。しかし、小児患者における採血の手順、特に最適な血液量については、血液中の細菌量に関する知見が少なく、また循環血液量が少ないため貧血を引き起こすリスクなどのいくつかの問題がある。
 
目的
 本レビューの目的は、小児患者におけるBCのための採血、特に血液量、ボトルの数および種類に関する現在の知見をまとめ、今後のガイドラインや推奨につなげることである。
 
方法
 2019年6月に「血液培養」「血液量」「血流感染」「診断」「小児」「敗血症」の検索語を用いて、PubMedで包括的文献検索を実施した。
 
内容
 採取血液量は、BCの感度、特異性、陽性化までの時間に影響を与える。小児患者における低レベル菌血症(≦10 cfu/mL)は報告されているよりも多いと推定される。小児のBCに対する「適切な」血液量に関する現在のアプローチは、主に体重または年齢に依存している。これらの勧告のうち、Gaurらが考案した方式が最も適切と思われる。すなわち、体重11kg未満の小児では1〜1.5mL、体重11〜17kgの患者では7.5mLを1本のBCボトルに採取することを推奨している。Gonsalvesらが発表した体重4-14kgの範囲では、より細かに採取量を定めることが有用であろう。
 
結論
 本レビューは、小児用 BC 採血に関する今後のガイドラインに重要である。治療の改善と BSI に関連する経済的負担の軽減に寄与することが期待される。今後の分子生物学的アプローチによる少ない採血量での検査は、興味深い選択肢となるかもしれない。
 
著者
体重(kg)
総採血量(ml)
ボトル数
1本あたりの血液量
Kellogg, et al.
<1.0
2
2
1
 
1.1-2.0
4.5
2
2.25
 
2.1-12.7
6.0
2
3
 
12.8-36.3
23.0
4
5-6
 
>36.3
30.0
4
7-8
 
著者
体重(kg)
総採血量(ml)
ボトル数
1本あたりの血液量
Gaur, et al.
1.5-2.1
1
1
1
 
2.2-11.1
1.5
1
1.5
 
11.2-17.1
7.5
3
2.5
 
17.2-37.2
11.5
3
3.5
 
>37.3
16.5
3
5.5
 
著者
体重(kg)
総採血量(ml)
ボトル数
1本あたりの血液量
Gonsalves, et al.
<3.9
1
2
0.5
 
4.0-7.9
3
2
1.5
 
8.0-13.9
6
2
3
 
14.0-18.9
12
4
3
 
19.0-25.9
16
4
4
 
26.0-39.9
20
4
5
 
40.0-53.9
32
4
8
 
>54.0
40
4
10
 
著者
体重(kg)
総採血量(ml)
ボトル数
1本あたりの血液量
Revell & Doerm, et al.
<3
2
1
2
 
3-5
3
1
3
 
5-7
5
1
5
 
7-12
10
2
5
 
12-20
15
3
5
 
20-30
30
3
10
 
30-45
40
4
10
 
45
60
6
10
 
著者
体重(kg)
総採血量(ml)
ボトル数
1本あたりの血液量
El Feghaly, et al.
<5
1
1
1
 
5-10
2
1
2
 
10-20
6
2
3
 
20-40
10
2
5
 
>40
20
2
10
 
著者
体重(kg)
総採血量(ml)
ボトル数
1本あたりの血液量
ASM (2005) & IDSA (2018)
<1
2
NA
 
 
1.1-2.0
4
NA
 
 
2.0-12.7
6
NA
 
 
12.8-36.3
20
NA
 
 
36.3
40-60
NA
 

 

本文で勉強になった点として

・採血量が1mL増えるごとに、菌の検出(yield of bacteria)が最大4.7%増加する。
Clinical and Laboratory Standards Instituteは、小児血液培養のために患者の総血液量の1%を超えないことを推奨。