小児感染症科医のお勉強ノート

群馬県立小児医療センターで感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

小児多系統炎症性症候群(MIS-C)の臨床的特徴

 新型コロナウイルス感染症に罹患した後、2−6週間で多臓器系統にわたり強い炎症を起こす病態があります。小児多系統炎症性症候群(MIS-C)と呼びます。川崎病と症状が似ており、川崎病に準じた治療が行われます。
 日本では比較的報告が少ないのですが、それでも症例報告は出ています。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 日本小児科学会からも、コンセンサスステートメントが出ています。

 治療については、大量ガンマグロブリンステロイドなど、いわゆる川崎病と同じ治療を行うことになります。

www.jpeds.or.jp

 

 米国では、MIS-Cの症例も多く、今回紹介するのは、MIS-Cと重症のCOVID-19の臨床像を比較した研究です。それぞれの群が500名以上で、日本ではとてもできない規模の研究です。

要点をまとめると、MIS-Cは重症COVID-19と比べて

・心血管症状が多い
・粘膜皮膚症状が多い
・好中球比率が高い
・血小板が低い
CRPが高い
という特徴があります。
 
 オミクロン株の流行で、小児の症例が増えてくる中で、重症COVID-19とMIS-Cの区別は重要です。治療が全く異なるからです。
 このような特徴をもつ症例を適切に拾い上げて診療するのが重要かと思います。
 
Characteristics and Outcomes of US Children and Adolescents With Multisystem Inflammatory Syndrome in Children (MIS-C) Compared With Severe Acute COVID-19
JAMA. 2021;325(11):1074-1087.
 
 小児の多系統炎症性症候群(MIS-C)の基準を改善することは、この疾患の転帰を改善するための取り組みに役立つ可能性がある。
 
目的: 小児のMIS-Cと重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の臨床的特徴と転帰を比較すること。
 
方法:米国の31州66医療機関で、2020年3月15日~10月31日に入院した21歳以下の患者1116人のケースシリーズである。最終フォローアップ日は2021年1月5日である。MIS-Cの患者は、「発熱、全身の炎症所見、複数臓器の炎症所見、SARS-CoV-2のRT-PCRまたは抗体検査陽性、または曝露歴があり、代替診断がない」症例とした。COVID-19の患者は、RT-PCRテストの結果が陽性で、重度の臓器障害がある患者とした。症状、臓器系統ごとの合併症、バイオマーカー、治療、臨床転帰を検討した。多変量回帰法を用いて,MIS-CとCOVID-19に関連する因子の調整リスク比(aRR)を算出した。
 
結果: 1116名(年齢中央値9.7歳、女性45%)のうち、539名(48%)がMIS-Cと診断され、577名(52%)がCOVID-19と診断された。COVID-19患者と比較して、MIS-C患者の年齢層は6~12歳が多かった(40.8% vs. 19.4%)、非ヒスパニック系黒人が多かった(32.3% vs 21.5%)。 COVID-19患者と比較して、MIS-C患者は、心臓・呼吸器合併症が多く(56.0% vs. 8.8%、aRR 2.99[95%CI、2.55-3.50])、呼吸器病変を伴わない心合併症が多かった(10. 6% vs 2.9%; aRR, 2.49 [95% CI, 2.05-3.02] )、心臓・呼吸器合併症を伴わない粘膜皮膚所見が多かった(7.1% vs 2.3%; aRR, 2.29 [95% CI, 1.84-2.85] )。MIS-C患者は、好中球/リンパ球比が高く(中央値6.4 vs. 2.7, P < 0.001) 、CRP値が高く(中央値152mg/L vs. 33mg/L, P < 0.001)、血小板数が少なかった(15.0万/μL未満 [41% vs. 17%, P < 0.001])。MIS-C患者398名(73.8%)とCOVID-19患者253名(43.8%)が集中治療室に入院し、入院中にMIS-C患者10名(1.9%)とCOVID-19患者8名(1.4%)が死亡した。左心室収縮機能が低下したMIS-C患者(172/503、34.2%)および冠動脈瘤(57/424、13.4%)が見られたが、それぞれ91.0%および79.1%が30日以内に正常化したという。
 
結論:MIS-C患者とCOVID-19患者を対象としたこのケースシリーズでは、臨床症状と関連する臓器パターンが明らかになった。これらのパターンは、MIS-CとCOVID-19の鑑別に役立つと思われる。
 
MIC-Sの治療
 
症例数(%)
415 (77.0)
374 (69.4)
抗凝固療法
337 (62.5)
抗血小板療法
308 (57.1)
レムデシビル
76 (14.1)
トシリズマブ
32 (5.9)
ヒドロキシクロロキン
14 (2.6)
回復期血漿療法
10 (1.9)
MIS-Cの症状
 
症例数(%)
呼吸器
432 (80.1)
胸部浸潤影
197 (36.5)
下気道感染
94 (17.4)
301 (55.8)
胸水
170 (31.5)
小児ARDS
57 (10.6)
心血管
359 (66.7)
心嚢水
125 (24.9)
左室駆出率
 
<35%
38 (7.6)
35−45%
39 (7.8)
45−55%
95 (18.9)
57 (13.4)
46 (8.5)
血液学的異常
256 (47.5)
66 (12.2)
消化器症状
50 (9.3)
 

f:id:PedsID:20220208123233p:plain