小児が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した後に、川崎病のような症状を発症する小児多系統炎症性症候群(MIS-C)が知られています。
日本小児科学会でも診療コンセンサスステートメントを作成しています。
今回、紹介するのは、新型コロナウイルスワクチンがきっかけになった多系統炎症性症候群の症例です。まだまだ診断定義もはっきりしたものはありませんが、新型コロナウイルスの抗原に対する宿主の過剰な免疫応答が原因とすると、それが本物のウイルスでも、mRNAワクチンによって体内で作られた抗原でも良いわけなので、このような疾患群も十分ありえるのかなと思います。
まだケースレポートくらいしかありませんが、今後、小児にも接種対象が広がるので、押さえておいたほうがよいかもしれません。
【症例】44歳女性
【既往歴】喘息
【現病歴】
ファイザー社製ワクチンを接種後2日目に左上腕と胸の痛みを訴えた。数日後に、左腋窩と腹部まで疼痛の範囲は拡大した。発熱、胆汁性嘔吐、下痢を認めた。左胸壁に紅斑が出現した。
血液検査では、白血球上昇、CRP上昇を認め、トロポニンT、CPKが上昇、Creが上昇していた。CTでは、左胸壁の筋肉に浮腫を認めた。
血圧低下が出現して、敗血症性ショックとして対応された。
抗菌薬投与などを行った。改善がなく、メチルプレドニゾロンパルスを実施したところ、著明に改善した。
【症例のポイント】
・ワクチン後に多系統炎症性症候群(MIS-V)を起こすことがある。
・ステロイド大量療法が有効だった。
・MIS-Vの病態や最適な治療法を確立するには更に研究が必要である。