小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

小児は無症候性にClostridioides difficileを保菌する

 Clostridioides difficileは、偽膜性腸炎CDIの原因となる細菌です。抗菌薬を投与すると、腸管内細菌叢が乱され、毒素を産生するC. difficileが腸管内に増加します。その結果、下痢・発熱・イレウスなどの症状を起こし、重症な例では、腸管穿孔やショックとなります。
 日本では、重篤な偽膜性腸炎を経験することはまですが、それでも成人ではそれなりに遭遇することはあります。
 一方、小児では、C. difficileが産生する毒素の受容体が腸管内にほとんど発現していません。そのため、偽膜性腸炎はまれです。不思議なことに、腸管内に毒素を産生するC. difficileがいるのに、全く無症状なこともあります。
 今日、紹介するのは、無症候性(下痢のない)の小児で、C. difficileが腸管内にどのくらい検出されるかのまとめです。年齢によって、保菌率の傾向があり、6−12ヶ月をピークに、年齢を重ねるごとに、保菌率は低下します。地域差があるのも興味深いところです。
 
要点
・6−12ヶ月の乳児が、保菌率が最も高く(41%)、毒素産生株も14%に保菌している。
・ヨーロッパや西太平洋の小児で検出率が高い。
 
Prevalence of Detection of Clostridioides difficile Among Asymptomatic Children A Systematic Review and Meta-analysis
JAMA Pediatr. 2021;175:e212328
 
はじめに
Clostridioides difficileが、無症状の乳幼児や小児から頻繁に検出されることが報告されているが、年齢による正確な検出率は明らかではない。本研究では、年齢層の異なる無症候性小児において、C. difficileの検出率を評価することを目的とした。
 
方法
 本研究では、1990年1月1日から2020年12月31日までに発表された論文をMEDLINEなどのデータベースを用いて検索した。2名の研究者が独立して論文をスクリーニングした。18歳未満の無症候性小児(下痢をしていない小児)を対象としたC. difficile検査を報告した研究を対象とした。主要評価項目は、無症候性小児における C. difficile 検出率とした。副次評価項目は、C. difficile 毒素原性株と非毒素原性株の有病率、地理的背景、所得、検査方法、検査年によって層別化された C. difficile 検出率であった。
 
結果
 合計95の研究、19186人の参加者が対象となった。毒素原性または非毒素原性C. difficileの検出率は、6−12カ月齢の乳児で最も高く41%(95%CI:32%~50%)、5-18歳では12%(95%CI、7%~18%)に低下した。毒素原性C. difficile検出率は、生後6-12カ月の乳児で14%(95%CI、8-21%)と最も高く、5歳以上の小児では6%(95%CI、2-11%)に低下した。有病率は地域によって異なった。北米南米が低く、ヨーロッパ、西太平洋地域で高い傾向にあった。検査方法による検出率の違いは認めなかった。所得階級、期間による検出率の違いはなかった。
 
結論
 本研究では、小児のC difficile菌コロニー化率は生後6~12カ月で最大となり、その後は減少した。これらの推定値は、幼児のC difficile検査結果を解釈する際の参考になるかもしれない。
 
年齢
C. difficileの
検出率
毒素原性
C. difficileの
検出率
1週未満
15%
5%
1週以上−1ヶ月未満
20%
6%
1ヶ月−3ヶ月未満
27%
3%
3ヶ月−6ヶ月未満
36%
11%
6ヶ月−1歳未満
41%
14%
1歳−2歳未満
22%
13%
2歳−5歳未満
17%
8%
5歳−18歳未満
12%
6%
 
本文中の表を参考に作成

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