COVID-19の急性期に、外科手術をすると予後が悪くなるのは、分かっていましたが、どのくらい空ければ安全かというのは、なかなか判断が難しいです。
日本麻酔科学会より、提言が出され、8月31日に更新されました。
「新型コロナウイルス感染症と診断されてから7週目以降に実施することが推奨される」
ただし、症状が残っている場合には、慎重な検討が必要。
この推奨の根拠となる論文を読んでみました。これだけのデータが出てくるのは、すごいなと感じました。
Timing of surgery following SARS-CoV-2 infection: an international prospective cohort study
Anaesthesia. 2021;76:748.
本研究は、国際的な多施設共同前向きコホート研究である。2020年10月に待機的手術または緊急手術を受けた患者を対象とした。術前にSARS-CoV-2に感染した患者と、感染したことがない患者を比較した。主要評価指標は、術後30日の死亡率とした。ロジスティック回帰モデルを用いて,SARS-CoV-2 感染の診断から手術までの期間で層別化した調整後 30 日死亡率を算出した。
14万231人の患者(116カ国)のうち、術前にSARS-CoV-2感染の診断を受けた患者は3127人(2.2%)だった。感染していない患者の調整後30日死亡率は1.5%(95%CI 1.4-1.5)。SARS-CoV-2に感染した患者で、診断後0-2週間、3-4週間、5-6週間に手術を受けた患者で死亡率が上昇した(オッズ比(95%CI)4.1(3.3-4.8)、3.9(2.6-5.1)、3.6(2.0-5.2))。診断後7週間以上経過してから行われた手術は、感染していない患者と同等の死亡リスクであった(オッズ比(95%CI)1.5(0.9-2.1))。SARS-CoV-2感染後7週間以降で手術をした場合、症状が継続している患者は、症状が治まった患者や無症状の患者よりも死亡率が高かった(6.0%(95%CI 3.2-8.7)対2.4%(95%CI 1.4-3.4)対1.3%(95%CI 0.6-2.0))。