小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

建物の入り口での体温測定は意味があるのか?

 COVID-19の流行に伴い、いろいろな場所で、非接触式の体温測定がされるようになりました。病院はもちろん、デパート、図書館、レストラン等。体温測定、手指消毒が、建物に入るための儀式となっています。
 最近、外来をしていると、37℃台の体温のお子さんをよく見ます。おそらく外気温が高いせいで、本当は熱ではないのだと思います。
 おでこで測定する体温計が、スクリーニングの役に立っているのかを検討してみた研究です。
 
要点は、自明のことに思えるのですが…
・寒い地域では、非接触式の体温計で体温を測ると、低くなる
 →よって発熱者をスクリーニングできない
 
Covid-19 screening: are forehead temperature measurements during cold outdoor temperatures really helpful?
Dzien C, et al. Wien Klin Wochenschr. 2021; 133: 331.
 
概要
研究の背景: 体温測定は、COVID-19などの感染症のスクリーニング検査として頻繁に行われるようになった。2020年3月にCOVID-19が発生したチロル地方オーストリア)の病院で、病院のスタッフの体温を計測した。病院は海抜995mの山岳地帯にあり、初春に外気温が低くなる。このような状況で、前額部での体温測定が感染症のスクリーニングツールになるかどうかを分析した。
 
方法:病院スタッフ101名を対象に、来院直後(0分)に非接触式の体温計で前額で体温を測定し,さらに1分後,3分後,5分後,60分後にも測定した。また、外気温と病院のエントランスホールの温度を追跡した。
 
結果:女性46名と男性46名の参加者の体温のデータが得られた。入院直後に測定した平均体温は、0分後に33.17±1.45℃と最も低く、1分後に34.90±1.49℃、3分後に35.77±1.10℃、5分後に36.08±0.79℃、60分後に36.6±0.24℃と上昇した。外気温は-5.5℃から0℃の間で、室内温度は20.5℃で一定していた。
 
結論:この研究から、少なくとも外気温の低い季節に、前額部で非接触式の体温計を用いた体温測定は、感染症のスクリーニングに適切なツールではない。
 
 あまりに低いときには、5分くらい経過して測定するのが良いと思いますが。直後に体温正常で入った人が、発熱している可能性があるので、やっぱりスクリーニングとしては機能しにくいですね。
 

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