小児感染症科医のお勉強ノート

群馬県立小児医療センターで感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

やっぱりブドウ球菌用ペニシリンは必要だよね

当院の浅見先生の論文です。
欧米では、MSSA(メチシリン感性黄色ブドウ球菌)の感染性心内膜炎(IE)の治療は、ナフシリンやオキサシリンなどのブドウ球菌ペニシリンが使用されますが、日本には有りません。代替薬として、セファゾリンが使用されます。
多くはこれで問題ないのですが、唯一「中枢神経病変を合併したIEでは、セファゾリンは髄液移行が悪く、治療できません。今回は、そんな症例を経験したので、
「やっぱりブドウ球菌ペニシリンは必要だよ」
と訴えたかったので、論文化しました。
 
浅見先生、publishおめでとうございます!!
 
細菌性髄膜炎を合併したメチシリン感性黄色ブドウ球菌による感染性心内膜炎
 
日本小児科学会雑誌 2020;124(11):1614
群馬県立小児医療センター 浅見雄司, 清水彰彦, et al.
 
■要旨
 黄色ブドウ球菌は近年,感染性心内膜炎(IE)の最も多い原因の一つである.ブドウ球菌ペニシリンASP)が使用できない本邦では,黄色ブドウ球菌IEの治療には通常セファゾリンが用いられる.しかし,セファゾリンは髄液移行性が低く,髄膜炎を合併したIEに対する使用は不適切である.我々は,細菌性髄膜炎を合併したメチシリン感性黄色ブドウ球菌(MSSA)によるIEの症例を経験した.
 症例はアトピー性皮膚炎で治療中の12歳男児で,発熱と意識障害を主訴に前医を受診した.髄液穿刺で多核球優位の細胞数増加を認め,血液培養からMSSAが検出され,心臓超音波検査で僧帽弁に付着する疣腫と僧帽弁逸脱を認めた.髄膜炎を合併したIEと診断され当院に転院し,翌日,疣腫除去術と僧帽弁形成術を施行した.ASPの代替薬としてセフォタキシムとバンコマイシンを併用した.6週間抗菌薬で治療を行い,後遺症なく退院した.
 本症例は,僧帽弁逸脱症とアトピー性皮膚炎がIE発症の原因となった可能性がある.ASPが使用されるべき症例であったが,本邦ではASPが未承認のため治療薬の選択肢が少なく,代替薬を使用した.国内でのASPの早期発売と抗菌薬供給の安定化は,ブドウ球菌による心内膜炎と髄膜炎の治療の質を改善するために重要である.
 

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