小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

テニスシューズで釘(くぎ)を踏んだ時には…

 
 釘(くぎ)を踏みつけたことによる足底穿刺創の合併症として、緑膿菌 (Pseudomonas aeruginosa) による骨軟骨炎、骨髄炎、化膿性関節炎が知られている。主にテニスシューズを履いて受傷した小児に発生するが、成人にも発生する報告がある。テニスシューズとの関連は、靴の内部が湿っていることが原因と考えられ、緑膿菌の増殖に適した環境になっていると考えられる。ある研究では、足底穿刺創に緑膿菌による骨髄炎を発症した8例の小児例のうち7例のスニーカーと、33組中4組の無作為に選ばれたスニーカーから緑膿菌が分離されたが、未着用の靴からは分離されなかった。
 
 
 Pseudomonas osteochondritis complicating puncture wounds of the foot in children: a 10-year evaluation
 J Infect Dis. 1989;160:657
 
 1978-88年の期間に、18ヶ月-19歳の小児77例で、足底穿刺創に緑膿菌による骨軟骨炎、化膿性関節炎を合併した症例(各々77例、17例)を経験した。受傷時の履物は、テニスシューズ(70例)、他の靴(5例)、靴なし(2例)であった。全症例で、感染した軟骨・骨に対して外科的デブリと関節ドレナージが行われていた。緑膿菌は38例で、黄色ブドウ球菌は18例で分離された。抗緑膿菌薬はすべての症例で手術前に開始された。平均治療期間は術後7.5±1.2日であった。追跡調査は5.2±3.4年(中央値4.8年;範囲3~10年)であった。再発は2例で、いずれの患者も以前には認めなかった化膿性関節炎を発症した。積極的な外科的管理により、緑膿菌の骨軟骨炎と化膿性関節炎は術後7日間の抗生物質投与で効果的に治療できることを示唆している。
 
 注意:77例中2例が再発しており、通常の骨髄炎の治療としては短すぎる気がします。
 
この病態は、2000年以降、ほとんど報告がないんです。ある程度の報告があったから、もう報告されなくなったのか、釘を踏んでしまう子どもが少なくなったのか、理由はよく分かりません。