小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

沖縄の小児レプトスピラ症とレプトスピラ症の治療

 沖縄からの小児レプトスピラの報告です。
 トライアスロンで感染者が出たことなどで有名なレプトスピラですが、沖縄では小児例の報告も結構あることに驚きました。
 
「沖縄のレプトスピラ症は、8−9月に、川で遊泳した10代男児に多い。」
Childhood leptospirosis in an industrialized country: Population-based study in Okinawa, Japan
PLoS Negl Trop Dis. 2018; 12(3): e0006294.
 2003年から2015年の期間に、沖縄県レプトスピラ症と診断された小児を対象として、疫学的特徴、臨床症状を検討した。検査室で診断が確定した症例のみが対象である。
 期間中に44名が診断された。90%は男児で、91%は10−20歳であった。96%の症例が8月と9月に発生した。最も多い感染経路は、川で遊泳であった。主な症状は、発熱(95%)、筋肉痛(52%)、結膜充血(52%)であった。
 沖縄での小児レプトスピラ症は、主に10代の男児に見られる。8月、9月に多く、川での遊泳が感染経路であることが多い。
 

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「小児の重症レプトスピラペニシリンGが推奨(セフトリアキソン・ドキシサイクリンでも良い)」
An Open, Randomized, Controlled Trial of Penicillin,Doxycycline, and Cefotaxime for Patients with Severe Leptospirosis
Clin Infect Dis. 2004; 39(10): 1417-24.
 
  レプトスピラの治療に関しては、最近は新しい論文はあまり出ていないようです。2004年ですが、タイのマヒドン大学のグループが行ったこの論文が一番引用されているようです。Uptodateでも、小児の重症レプトスピラにはペニシリンを薦めており、成人では、セフトリアキソンやドキシサイクリンが推奨されます。
(個人的な経験では、セフトリアキソンしか使用したことがありません。)
 
 本研究は、オープンラベルランダム化比較試験です。重症レプトスピラ症が疑われる患者に対して、セフトリアキソン、ペニシリンG,ドキシサイクリンの効果を比較しました。タイ北東部の4病院で実施され、540名の患者が含まれました。
 264名が、血清学的診断・培養検査でレプトスピラ症と確定診断されています。死亡率は5%です。死亡率、解熱までの時間、検査値異常の改善までの時間について、抗菌薬の間で有意な差は認めませんでした。確定診断された患者に限ったサブグループ解析が実施されましたが、結果は同じでした(抗菌薬による治療効果の差はない)。
 結論としては、レプトスピラ症の治療において、ペニシリンG以外にも、ドキシサイクリンとセフトリアキソンは十分な代替薬といえます。
 
 
 個人的な経験数が少ないのですが、日本においてレプトスピラ症を直ちに診断するのは困難であると思います。リケッチア感染症、腸チフスマラリア、デングなど、いろんな疾患が鑑別に上がると思われます。そのため、いきなりペニシリンGで治療を始めるシチュエーションはあまりないように思います。(トライアスロンで同時期にたくさんの患者が出れば、わかりやすいと思いますが。)しかも治療期間は1週間程度ですので、結果が判明した頃に、「ああやっぱりね〜。」とか言いながら、セフトリアキソンでの治療を終えている気がします。