小児感染症科医のお勉強ノート

群馬県立小児医療センターで感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

新生児の早発型敗血症(early-onset sepsis)における血液培養陽転までの時間(time to positivity)の検討

 新生児の敗血症は、症状がわかりにくいため、どうしても抗菌薬投与が長くなりがちです。血液培養が陽性になっていなくても、抗菌薬を止めにくいのが現状です。本研究では、新生児の早発型敗血症において、血液培養が陽転するまでの時間を検討しました。臨床的に改善が見られていたら、EOS発症後36-48時間で抗菌薬終了を検討しても良いかもしれません。
 
Time to positivity of neonatal blood cultures for early-onset sepsis
Kuzniewicz MW, et al. Pediatr Infect Dis J. 2020;39:634-40.
 
背景:新生児早発型敗血症(early onset sepsis; EOS)において、血液培養の結果が判明する前に、経験的抗菌薬投与がしばしば開始される。血液培養陽転までの時間(time to positivity; TTP)によって、経験的抗菌薬の投与期間を決めることが可能である。本研究では、新生児のEOSにおけるTTPとそれに影響を与える因子を決定することを目的とした。
 
方法:対象は、北カリフォルニア、ボストン、フィラデルフィアの19病院で出生した週数が23−42週の新生児で、生後72時間以内に血液培養を取られた症例である。TTPの定義は、血液培養が採取された時間から微生物検査室から血液培養陽性が報告されるまでの時間である。
 
結果:594検体で病原性のある細菌が同定された。B群レンサ球菌と大腸菌が74%を占めた。TTPの中央値は21.0時間(IQR; 17.1-25.3時間)であった。血液培養が陽転する確率は、24時間以内が68%、36時間以内が94%、48時間以内が97%であった。母体への抗菌薬投与、35週未満の早産、血液培養検査機器によるTTPへの有意な影響はなかった。
 
結論:新生児のEOSにおいて、母体への予防的抗菌薬の有無に関わらず、94%の血液培養陽性症例は36時間以内に、血液培養が陽転する。TTPの情報は、EOSに対する経験的抗菌薬投与期間を決定する上で、重要な情報となる。
 
 
アブストラクトには記載がありませんが重要な点をいくつか
・各施設で1ml以上の血液採取を推奨しているが、実際の採血量は不明。
・真の起炎菌が発育した検体で、TTPが48時間以上かかった例は、17例あった。viridans streptococci 6例, B群レンサ球菌 3例、Staphylococcus aureus 2例, Gardnerella vaginalis・大腸菌・リステリア・肺炎球菌が各1例であった。
・血液培養から検出された菌がコンタミネーション(汚染菌)であった検体は、1018検体。血液培養陽性となった合計1626検体のうちの63%を占めた。
コンタミネーション検体において、TTP中央値は35.4時間(IQR; 28.5-45.1時間)と、有意に長い。
 
 
 

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