小児感染症科医のお勉強ノート

群馬県立小児医療センターで感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

手指の表層感染症

Acute hand infections

Am Fam Physician. 2019;99(4):228-236.
 
手指の感染症のまとめです
よく見る表層感染の部分をまとめました
 
(1)爪周囲炎 (acute paronychia)
(2)ひょう疽(felon)
(3)ヘルペスひょう疽(herpetic whitlow)
 
(1)爪周囲炎
 爪周囲炎は、爪周囲の炎症で、膿瘍を伴うことがある。爪周囲炎は、急性と慢性の病型がある。急性爪周囲炎は、爪や爪郭やあま皮の外傷が契機となる。症状は、爪周囲の発赤・腫脹・疼痛などで、蒼白になったり浸潤が触れる場合には、膿瘍形成も考える。リスク因子は、つけ爪、マニキュア、さかむけ、職業(皿洗いなど)、陥入爪、爪噛み・爪しゃぶりなどである。ブドウ球菌と連鎖球菌が最も多い原因菌であるが、複数菌感染や嫌気性菌の関与もある。また、まれに緑膿菌などのGram陰性菌が原因のことがある。軽症では温浴と局所の抗菌薬投与を行う。膿瘍形成があれば、ドレナージを行う。
 
(2)ひょう疽
  ひょう疽は、手指の皮下の指頭髄(digital pulp)の感染症である。原因は、ピンなどで受傷したり、爪周囲炎が波及することによる。線維隔壁により指頭髄は、多くのコンパートメントに分かれる。ひょう疽は、強い痛みと腫脹、発赤が特徴的で、DIP関節よりも中枢側に広がることはない。超音波検査は、膿瘍の有無を確認するのに有用である。ひょう疽は、手指の壊死や骨髄炎、腱鞘炎などを合併することがあり、適切な診断と治療が重要である。治療は、患部を清潔にし、挙上し、抗菌薬投与を行う。膿瘍がある場合には、外科的ドレナージを行う。
 
(3)ヘルペスひょう疽(herpetic whitlow)
 ヘルペスひょう疽は、単純ヘルペスウイルス(HSV)が指の遠位部の皮膚に感染した結果生じた感染症である。ウイルスに曝露後、3−4日後に、底部が発赤し、透明な液体を含む水疱が出現する。内容液は次第に混濁する。指しゃぶりをする小児や手袋を着用せずにHSV-1の病変に触れた医療従事者などで見られる。ヘルペスひょう疽の診断は臨床診断である。はっきりしないケースでは、水疱の内容液を用いて、Tzanckテスト、ウイルス培養、PCR法で検査を行う。20−50%の症例で反復する。前駆症状として、再発例では軽度の灼熱感、掻痒感、不快感が、水疱が生じる2−3日前に見られることがある。ヘルペスひょう疽の治療は、感染のリスクを無くし、疼痛コントロールし、抗ウイルス療法を考慮することである。初回のヘルペスひょう疽は、自然治癒傾向があり、21日以内に、完全に改善する。保険適応はないが、経口抗ウイルス療法を考慮する。対象となるのは、再発症例、発症後48時間以内、免疫不全者である。活動性のある病変を覆って乾燥させる。