小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

毛細血管拡張性運動失調症と免疫不全

まとめ
「毛細血管拡張性運動失調症(AT)では、高率にガンマグロブリン低下やリンパ球減少が認められる。年齢が上がるにつれて、免疫状態にあまり変化はない。しかし、気道感染症を反復することが、ATでは問題になる。中耳炎や副鼻腔炎など上気道感染の反復に加え、年齢が上がると肺炎や気管支炎の反復も増加する。」
 
Immunodeficiency and infections in ataxia-telangiectasia
Nowak-Wegrzyn A, et al. J Pediatr. 2004;144:505-11.
 
目的:毛細血管拡張性運動失調症患者(ataxia-telangiectasia: AT)における免疫不全の特徴を明らかにし、免疫不全が進行性であるか、感染症への感受性が上昇するかを検討した。
方法:Johns Hopkins大学のAtaxia-Telangiectasia Clinical Center (ATCC)でAT患者100名のカルテ記載をもとに研究を行った。
結果:免疫グロブリンが低下している患者は多く見られた。IgG4低下(65%)、IgA低下(63%)、IgG2低下(48%)、IgE低下(23%)、IgG低下(18%)であった。71%の患者でリンパ球減少を認めた。75%の症例でB細胞数が低下、51%でCD8陽性T細胞が低下していた。年齢が進むにつれて、免疫低下が進行する所見は認めなかった。反復する気道感染症が多く認められた。中耳炎46%、副鼻腔炎27%、気管支炎19%、肺炎15%であった。敗血症は5例に認められ、内、2名が悪性腫瘍に対して化学療法中であった。疣贅は17%、単純ヘルペスは8%、伝染性軟属腫は5%、食道カンジダは3%、帯状疱疹は2%の症例に認められた。特に合併症の無い水痘感染は44%に認め、2例は複数回の感染症状を認めた。ニューモシスチス肺炎と生ワクチンによる副反応は1例にも認められなかった。
結論:AT患者では、免疫異常は高率に認められるものの、全身性の細菌感染・ウイルス感染・日和見感染症の罹患は稀である。また、免疫異常は年齢が進むにつれて進行することはなかった。
 
 

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 濃い灰色が反復する上気道感染、薄い灰色が反復する下気道感染を起こした割合。反復する中耳炎・副鼻腔炎の定義は、1年に7回以上のエピソード。反復する気管支炎の定義は、2歳未満では1年に2回以上、2歳以上では10年間に4回以上。反復する肺炎の定義は、2歳未満では2回以上、2歳以上では10年間に2回以上。
 年齢が上がるにつれて、上気道感染はほとんど変わらないが、下気道感染が増える傾向がある。
 本文中には、13例がガンマグロブリン補充を受けていたと記載あり。