ミノマイシンなどのテトラサイクリン系抗菌薬は、歯牙黄染が副作用として知られており、8歳未満の小児への使用が禁忌です。しかし、テトラサイクリン系であるドキシサイクリンは、カルシウムへ結合する割合が低く、歯牙黄染のリスクが低いのではないかと考えられていました。2018年のRed Bookで、8歳未満でも短期間であればドキシサイクリンを使用して良いと、推奨を変更しました。
今回は、ドキシサイクリンを年少児で使用しても大丈夫であった研究です。類似の研究はいくつかあり、reviewも出ています。
Dental Staining After Doxycycline Use in Children
Heidi Pöyhönen et al. J Antimicrob Chemother . 2017;72(10):2887-2890.
この論文は、フィンランドでドキシサイクリンを8歳未満の小児に対して使用した研究です。
背景:ドキシサイクリンは、歯牙黄染のために8歳未満の小児への使用は避けられてきた。しかし、ドキシサイクリンは他の古典的なテトラサイクリン系抗菌薬と異なっている。ドキシサイクリンは、重要な抗菌薬であるが、小児への安全性に関する研究は少なかった。
目的:8歳未満の小児にドキシサイクリンを使用した時の歯牙黄染の状況を検討する
方法:カルテからドキシサイクリンの使用状況を把握し、永久歯が生えてきた時点で、小児歯科医の診察を受け、歯牙黄染やエナメル質低形成がないか確認する。結果は、写真に撮影し、もう1名の小児歯科医も確認した。
結果:38名の患者を検討した。ドキシサイクリンを投与された時点での患者の平均年齢は4.7歳(範囲:0.6-7.9歳)であった。最初2−3日は10mg/kg/day(範囲 8-10mg/kg/day)で、それ以降は、5mg/kg/day(2.5-10mg/kg/day)であった。平均日数は12.5日間で、範囲は2−28日間であった。テトラサイクリン系による歯牙黄染やエナメル質低形成は、全ての症例で認めなかった。
結論:ドキシサイクリンを8歳未満の小児に使用しても、歯牙黄染を引き起こす可能性は低い。
ちなみに、Red Book 2015では、懸念があっても、テトラサイクリン系を使用した方がよい状況は以下のように書いていました。
・ロッキー山紅斑熱
・エールリヒア感染症
・アナプラズマ病
・コレラ
・炭疽です
日本では、これにツツガムシ病と日本紅斑熱が加わります。
注意:現状では、国内の添付文書では、8歳未満は禁忌となっています。そのため、院内の倫理委員会審査や保護者の同意を得て使用することが必要です。