小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

成人の川崎病は冠動脈病変合併例が多い

小児ではコモンな川崎病も、成人発症例は診断されるまで時間がかかり、冠動脈病変の残存や心筋梗塞が多いようです。

 

Kawasaki disease in adults: Observations in France and literature review

Autoimmun Rev. 2016;15(3): 242-9.

 

目的:川崎病は、小児に多く見られる血管炎で、成人発症は稀である。フランスにおける成人発症の川崎病を解析した・

方法:18歳以降の川崎病の症例を前方視的+後方視的に集めた。症例は、フランスの医療ネットワークと医学文献を通じて集積した。

結果:1992年から2015年の期間に、26施設から43例の川崎病の症例があり、今回の解析に含めた。平均年齢は30歳(範囲:18−68歳)、男女比(M/F)は1.2(やや男性が多い)、34例はAHAの診断基準を満たし、9例は不完全型であった。主要症状は、発熱(100%)、皮疹(98%)、四肢の変化(91%)、結膜炎(77%)、口腔内の変化(89%)、頸部リンパ節炎(55%)、心臓合併症(45%)であった。35%の症例に大血管の血管炎を合併した。冠動脈の血管炎所見が26%、冠動脈瘤が19%に見られた。治療は、ほとんどの症例で免疫グロブリン投与(79%)、アスピリン(81%)が使用された。4名の患者が心筋梗塞を発症した。中央値5ヶ月のフォローアップでは、冠動脈瘤が残存した症例が9%であった。冠動脈病変が残存した症例は、早期治療に少なく、無治療・治療が遅れた症例に多かった。

結論:今回の検討で、成人発症の川崎病では、冠動脈合併症の割合が多かった。早期診断と治療が重要である。早期の免疫グロブリン投与が、予後を改善する傾向がある。

 

 

Kawasaki disease in adults: Observations in France and literature review
 
Autoimmun Rev. 2016;15(3): 242-9.
 
目的:川崎病は、小児に多く見られる血管炎で、成人発症は稀である。フランスにおける成人発症の川崎病を解析した・
方法:18歳以降の川崎病の症例を前方視的+後方視的に集めた。症例は、フランスの医療ネットワークと医学文献を通じて集積した。
結果:1992年から2015年の期間に、26施設から43例の川崎病の症例があり、今回の解析に含めた。平均年齢は30歳(範囲:18−68歳)、男女比(M/F)は1.2(やや男性が多い)、34例はAHAの診断基準を満たし、9例は不完全型であった。主要症状は、発熱(100%)、皮疹(98%)、四肢の変化(91%)、結膜炎(77%)、口腔内の変化(89%)、頸部リンパ節炎(55%)、心臓合併症(45%)であった。35%の症例に大血管の血管炎を合併した。冠動脈の血管炎所見が26%、冠動脈瘤が19%に見られた。治療は、ほとんどの症例で免疫グロブリン投与(79%)、アスピリン(81%)が使用された。4名の患者が心筋梗塞を発症した。中央値5ヶ月のフォローアップでは、冠動脈瘤が残存した症例が9%であった。冠動脈病変が残存した症例は、早期治療に少なく、無治療・治療が遅れた症例に多かった。
結論:今回の検討で、成人発症の川崎病では、冠動脈合併症の割合が多かった。早期診断と治療が重要である。早期の免疫グロブリン投与が、予後を改善する傾向がある。
 

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