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概念
疫学と病態生理
眼窩蜂窩織炎は、若年の小児に多い。細菌性副鼻腔炎のまれな合併症である。眼窩蜂窩織炎の86−98%に副鼻腔炎を合併している。蝶形骨洞の副鼻腔が最も波及しやすい。副鼻腔炎以外の原因としは、眼手術、外傷、麻酔、涙のう炎、歯性感染症、中耳炎などである。
微生物学的特徴
眼窩蜂窩織炎の原因菌の特定は難しく、膿瘍ドレナージをした場合などしか、眼窩内の原因菌を特定できず、副鼻腔培養を根拠に抗菌薬を決定する。血液培養は陽性となることもある(0-33%)。成人では血液培養の陽性率は低い。
原因菌は、S. aureusとレンサ球菌が最多である。94例の小児眼窩蜂窩織炎の報告では、Streptococcus anginosus groupが最多で15%、S. aureusが9%、A群溶連菌が6%、S. pneumoniaeが4%であった。MRSAによる眼窩蜂窩織炎の報告もある。インフルエンザ桿菌は、かつては重要な原因菌であったが、Hibワクチンの普及によりまれになった。まれな原因菌として、Eikenella corrodens, Fusobacterium, Peptostreptococcusなどもある。35%が複数菌感染症であったという報告もある。ムコールやアスペルギルスも、非常に稀であるが致死的な眼窩蜂窩織炎の原因菌である。特に免疫不全者で検討することが必要である。ムコールは、糖尿病性ケトアシドーシスや腎性アシドーシスの患者で、アスペルギルスは好中球減少症やHIV感染症などの免疫不全がリスクとなる。結核菌による報告もある。
臨床症状
眼科周囲蜂窩織炎との鑑別が重要であるが、眼瞼浮腫や発赤は両者に共通する。眼窩蜂窩織炎では、眼球運動に伴う疼痛、眼瞼下垂、眼球運動障害による複視が見られる。Chemosis(結膜の浮腫)は、眼窩蜂窩織炎で見られる頻度が高い(眼科周囲蜂窩織炎でも重症例で見られる)。発熱やWBC上昇は、眼窩蜂窩織炎で見られる事が多い(が、両者を区別できるわけではない)。
合併症
骨膜下膿瘍、眼窩内膿瘍、失明、海綿静脈洞血栓症、脳膿瘍などが合併症である。特に、全2者は比較的多い合併症である。急激に進行することがあるので、日々の視力の確認と対光反射の確認など経過観察必要である。何らかの症状があれば、造影CTを撮影する。眼窩蜂窩織炎での、失明率は3−11%、死亡率は1−2%である。
治療
抗菌薬:バンコマイシン+(セフトリアキソン or セフォタキシム)。一部の症例では嫌気性菌のカバーを行う。
外科的治療:内科的治療に反応が悪い場合、外科的生検を行い原因菌を特定することが適応になる。膿瘍形成(特に10mm以上の大きさ)がある・視力障害がある時は、ドレナージの適応である。