小児感染症科医のお勉強ノート

群馬県立小児医療センターで感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の排泄期間は約13日間

Epidemiologic Features and Clinical Course of Patients Infected With SARS-CoV-2 in Singapore
Yong BE, et al. JAMA. 2020 Mar 3.
 
 2020年1/23-2/3の期間にシンガポール新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断された成人の疫学的な特徴と臨床経過に関する報告です。アウトブレイク対応のために編成されたSingapore 2019 Novel Coronavirus Outbreak Research Teamが筆者で、非常に迅速で科学的な対応されている様子がよくわかります。発表までの時間も早く、すでに論文執筆時点で、便や尿や血液からのウイルス検出など、様々な観点から検査が実施されています。鼻咽頭からのウイルス消失までPCRを繰り返しており、排泄期間の参考にもなります。先進国として目指すべき感染症対応ではないかと思います。(日本よりも遥かに人的・金銭的資源が豊かだからこそできる対応と思います。一言で、羨ましい…。)
 
論文の内容です
 上記の期間中に、PCRをでSARS-CoV-2感染が確認され入院した症例は18例でした。年齢の中央値は47歳で、男女比は1:1でした。上気道炎症状を呈したのは12例(67%)でした。鼻咽頭からのウイルス検出が7日以上の期間に渡ってみられたのは15例(83%)でした。ウイルス排泄日数の中間値は12日でした。6名(33%)は酸素投与が必要となり、うち2名がICUで治療を受けました。死亡例はありませんでした。便にウイルスが検出された症例が4/8例(50%)、血中にウイルスが検出された症例が1/12例(8%)でした。尿から検出された症例はありませんでした。酸素投与を行った症例のうち、5例にロピナビル/リトナビルが投与されました。5例中3例は、治療開始3日以内に解熱し、酸素需要も改善しました。
 
 シンガポールでの18例の症例報告です。軽症例が診断されているため、中国からの報告と比較して、症状は軽度である割合が多いです。
 
 酸素投与が必要となった症例は、CRPが高い傾向がありそうです。考察にも記載がありますが、接触者の追跡を積極的に行っているため、武漢など中国からの報告と比較して、より軽症である特徴があります。
 
 それぞれの患者の臨床経過も、すごく分かりやすいです。
 シンガポールでは、このような感染症患者が入院できる病院をかなり集約化しているので、感染対策の戦略の立て方や発信の仕方が遥かに日本より優れていると思います。
 

f:id:PedsID:20200312133623p:plain