小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

小児の感染性心内膜炎術後の死亡に関連するリスク因子

Outcomes of surgery for infective endocarditis in children: A 30-year experience 
J Thorac Cardiovasc Surg. 2019;158:1399
 
オーストラリアから、小児の感染性心内膜炎(IE)の術後の予後に関する報告です。
背景:
 小児において、IEはまれな疾患である。IEの術後の長期予後に関する報告は少ない。
方法:
 IEに対する手術を実施した小児例のデータを後方視的に収集した。
結果
 1987年から2017年までに、138例の小児のIEに対して手術を実施した。平均年齢は8.3±6.5歳であった。80.4%の症例に先天性心疾患を認めた。IE発症前に心臓手術を受けていた症例(つまり術後のIE)は50.7%で、19.6%が弁置換術を実施されていた。手術死亡率は5.8%。平均追跡期間は9.7±7.6年である。5年生存率は91.5%、25年生存率は79.1%であった。死亡に関連するリスク因子は、年齢(hazard ratio [HR] 0.88)、人工弁IE(HR 3.86)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌によるIE(HR 4.52)、手術前の抗菌薬の投与期間(HR 1.02)、ショック(HR 3.68)、大動脈弁置換術(HR 3.22)であった。左心系IEに限れば、死亡に関連するリスク因子は、心不全の合併(HR 18.8)、疣贅のサイズ(HR 1.06)であった。術後25年間で、IEの再燃を認めない割合は94.7%であった。
結論:
 IEの手術を行った小児の長期予後は良好で、IEの再燃の割合は少ない。感染の活動性が高い時期の手術により死亡率や再手術率が増加することはない。左心系IEでは、疣贅のサイズと死亡率が関係しており、予後の推定に有用である。
 
要約に記載されている以外の情報
・リウマチ熱の既往のある患者は4名(2.9%)のみであった。
・起炎菌は、黄色ブドウ球菌が47例(34.1%)、CoNSが12例(8.7%)、レンサ球菌が39例(28.3%)。真菌によるIEは0例。
・塞栓症状があったのは、40例(29%)で、脳梗塞は13例(9.4%)に合併していた。
・疣贅の部位は、大動脈弁が36例(26.1%)、僧帽弁が29例(21.0%)であった。人工血管やシャントが21例(15.2%)と術後IEが多いことを反映している。
 
 感染の活動期(菌血症が持続している時期)であっても、早期手術は検討したほうが良い。特に死亡リスクに関連する要因があれば、より手術を早期に検討する。