小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

MSSA菌血症の治療において、セフトリアキソンはセファゾリンより劣る可能性がある

A Comparison of Cefazolin Versus Ceftriaxone for the Treatment of Methicillin-Susceptible Staphylococcus aureus Bacteremia in a Tertiary Care VA Medical Center.
Open Forum Infect Dis. 2018 May 18;5(5):ofy089.
 
米国の退役軍人病院で実施された後方視的コホート研究です。MSSA菌血症に対して14日以上セファゾリンまたはセフトリアキソンを使用した患者を対象にしました。
71名の売り、38名がセファゾリン、33名がセフトリアキソンで加療されました。治療失敗率は、40.8%でしたが、セファゾリン群で28.9%、セフトリアキソン群で54.5%でした。
 治療失敗に関連する要因として、長期間の経静脈抗菌薬投与、心不全の合併、外部の訪問看護ステーションでの治療が挙げられた。
 セフトリアキソンでMSSA菌血症の治療を行った場合、セファゾリンよりも治療失敗率が高い可能性がある。
 
治療失敗の定義は、予定外の治療期間の延長、経静脈抗菌薬投与を終えることができなかった、90日以内の感染の再燃、経口抗菌薬を長期抑制療法として使用、再入院、治療終了90日以内に元の感染に関連する部位の手術、外来フォロー中断でした。
死亡率に関しては、セファゾリンの11%、セフトリアキソン3%で有意差なしでした。セフトリアキソンにおける治療失敗の理由の55%が、予定外の治療期間の延長でしたので、必ずしも治療効果が無いわけでは無いと思います。
 
 しかし、標準治療薬であるセファゾリンを使えるなら、使ったほうが良いでしょうというメッセージかと思います。

 

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