小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

1週間に1回の抗菌薬交互投与(WOCA)は神経因性膀胱患者の尿路感染を減らす

Weekly sequential antibioprophylaxis for recurrent UTI among patients with neurogenic bladder: a randomized controlled trial. 
Clin Infect Dis. 2019 Dec 23. pii: ciz1207. doi: 10.1093/cid/ciz1207. [Epub ahead of print]
 
脊髄損傷による神経因性膀胱の患者に、2種類の抗菌薬を交互に1週間に1回投与すると、抗菌薬が必要な尿路感染症の頻度が低下する
 
 脊髄損傷で神経因性膀胱がある患者は、尿路感染症(UTI)を繰り返すため、外来での管理に難渋することがあります。(それ以外に、細菌尿があってもUTIとは言えない、感覚が低下しているので、CVA叩打痛が分からないなど、診断も難しいのですが…)
 2種類の抗菌薬を交互に1週間に1回投与する(weekly oral cyclic antibiotic; WOCA)方法が、抗菌薬が必要なUTIを減らすか、フランスから報告です。
 45名の患者は、全員が脊損で神経因性膀胱があり、自己間欠導尿を行っていますが、繰り返しUTIの罹患歴があります。WOCA 23名、プラセボ22名に割り付けて、6ヶ月間フォローしました。
 2種類の抗菌薬は、過去の培養結果やアレルギー歴を考慮して選択しました。候補となったのは、アモキシシリン(1g/d)、セフィキシム(200mg/d)、ホスホマイシン(6g/d)、ST合剤(160/800mg/d)です。半分以上の症例で、ホスホマイシン+セフィキシム(商品名セフスパン)が選択されました。
 研究期間中、抗菌薬が必要となったUTIの回数の中央値は、WOCA群 1.0 [IQR 0.5; 2.5], Control群 2.5 [IQR 1.2; 4.0]であり、WOCA群で有意に少なかった(p=0.0241)。WOCA群では、有熱性UTIの発症は無く (control群では9例 45%が経験)(p<0.001)、抗菌薬の投与回数も少なかった。有害事象や耐性菌の検出に関しても差がなかった。
 結論として、WOCAは、抗菌薬の投与が必要なUTIを減らし、安全性が高く、観察の範囲では耐性菌の頻度を増やさない。
 
 脊損以外にも脳性麻痺などでUTIを繰り返す症例は多く経験します。今までは、ST合剤の連日少量投与くらいしか良い方法が無く、困っていたのですが、週に1回しっかりした量を投与するというのは理にかなっているかもしれません。しかし、いざUTIを起こした時に、多くがホスホマイシンとセフィキシム耐性の菌であることからUTIの治療が難しくなる可能性があり、懸念はあります。
 
                                            WOCA群  コントロール

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