小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

新生児のEdwardsiella tarda菌血症は、髄膜炎の除外が必須

Edwardsiella tarda bacteremia, Okayama, Japan, 2015-2016. Emerg Infect Dis. 2019;25(10):1817.
 
分娩時の母子感染によるEdwardsiella tardaにより多発脳膿瘍および脊椎膿瘍を来した新生児例
大阪母子医療センター雑誌 2017:33(1):27
 
 Edwardsiella tardaは魚類・爬虫類の常在菌で、ヒトへの感染は稀であるが、生魚などから経口感染し腸炎などをきたすことがある。菌血症の症例もあり、倉敷の上山先生が26例の報告されています。
成人では、年齢中央値 75 (範囲:45-101歳)で、胆管炎、肝膿瘍、腸炎、胆嚢炎など、ほとんどが腹腔内感染症で、髄膜炎は無いようです。また、感受性が良い株が多く、アンピシリンで治療が行われている症例が多い印象を受けました。
 

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一方、新生児のE. tarda菌血症は、非常に報告が少なく。自験例1例と8例のliterature reviewをした論文があります(どうして英文で発表しなかったのかもったいないですが)。
 新生児のE. tarda菌血症の特徴は、ほぼ正期産の経膣分娩が殆どで、日齢0-10でsepsisとして発症します。ほとんどの症例が髄膜炎を合併し、死亡率は33%でした。成人で見られるような胆道系感染や腸管感染症はありません。また、母体の培養陽性例があり、経膣分娩→出生時に保菌・感染→菌血症として発症するというストーリーが考えられます。
 

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