小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

急性発症の血管漏出を病態とするClarkson症候群は重篤で注意が必要

Eur J Pediatr. 2018 Aug;177(8):1149-1154. doi: 10.1007/s00431-018-3189-8. Epub 2018 Jun 23.

Idiopathic systemic capillary leak syndrome (Clarkson syndrome) in childhood: systematic literature review.

Clarkson症候群は、1960年に初めて報告された疾患で、血管透過性が亢進し、タンパクを豊富に含む血漿が間質に漏出することで起きる、原因不明の症候群である。多くの症例で、急性感染症が先行する。血漿漏出の時期に見られる症状は、四肢の浮腫、循環血漿量低下が見られ、その後、血管透過性が正常化する。
 多くは成人に見られ、モノクローナルなガンマグロブリン血症を認める。これまでの小児のClarkson症候群のliterature reviewを行った。
 
 小児症例は24の論文で報告されていた。9本がヨーロッパ、9本が北米、5本がアジア(日本からは1本のみ, Iwasa, et al. BMC Pediatrics. 2014;14:137)、1本がオーストラリアであった。32例の症例が含まれ、いずれも基礎疾患を持たない健常児が発症した。75%の症例で急性感染症が先行した。10症例が1回のエピソードのみで、残り22例は2回以上反復した。67回のエピソードが有り、非代償性ショック、横紋筋融解症、急性腎障害、肺水腫、胸水・心嚢水がよく見られる合併症であった。14回の肺水腫のエピソードのうち、AKIを合併したのは3例であった(腎不全による溢水ではなく、血管透過性が問題であることを示唆する)。32例のうち死亡例は4例。エピソードの60%は重篤であった。
 急性感染症の原因は、インフルエンザ、パラインフルエンザウイルス、エンテロウイルス、RSウイルス、ロタウイルス、GASであった。
 ほぼすべての症例で、静注で補液が投与され、O2投与がほとんどの症例で投与された。19例で人工呼吸器管理をされた。5例で心肺蘇生が行われた。
 
 

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