小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

抗菌薬が殺菌性か静菌性は大して意味がない

Busting the Myth of “Static vs Cidal”: A Systemic Literature Review
Clin Infect Dis. 2018;66:1470
 
殺菌性抗菌薬(bacterriocidal)は静菌性抗菌薬(bacteriostatic)よりも治療効果が高い考えられがちである。1985年以降に発表された56のRCT研究の結果をレビューして、効果を比較した。
49の研究で、両者の効果に有意差はなかった。6の研究で静菌性抗菌薬のほうが治療効果が優れていた。1つの研究でのみ、殺菌性抗菌薬のほうが優れていてた。その研究では、静菌性抗菌薬の用量が少なく、薬理学的に正しい投与が行われていなかったので治療効果が不十分と考えられた。
(人工呼吸器関連肺炎に対して、イミペネム(殺菌)とチゲサイクリン(静菌)を比較した試験で、チゲサイクリンの治療効果が劣っていた。Diagn Microbiol Infect Dis. 2010;68:140)
現時点で、エビデンスレベルの高い研究では、静菌性抗菌薬より殺菌性抗菌薬の方が優れているということはない。用量、PK、組織移行性など他の要素の方が重要である。