小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

小児の尖圭コンジローマ Condylomata acuminata (anogenital warts) in children (Uptodate要約)

Introduction
 尖圭コンジローマ(Condylomata acuminata, anogenital warts, venereal warts)は、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症の症状の一つで、肌色(flesh-colored)や色素沈着したイボ状の病変が肛門周囲や外陰部にできる。性的接触やそれ以外の経路で、HPVを獲得し、尖圭コンジローマを発症する。特に若年小児では、非性的接触による伝播が多い。
 
Epidemiology
 小児の尖圭コンジローマの疫学的なデータは限られている。有病率も不明である。発症年齢の平均値は2.8-5.6歳と推定される。女児に多いという報告もある。
 
Etiology
 尖圭コンジローマは、100以上のserotypeのあるHPV感染が原因である。成人では、HPV 6, 11が最も多いが、小児の場合、血清型の種類が多い。小児の外陰部・肛門周囲病変は、HPV1-4なども見られる。200例の検討では、HPV6と11が56%を占める。HPV1-4が12%、HPV16,18が4%であった。
 
Transmission
 性的虐待の可能性が、尖圭コンジローマの小児患者を見る上では、最も大きな心配である。しかし、小児では、その他の経路が大部分を占める。
・Heteroinoculation:入浴やオムツ替えの時に、保護者(の手指)から感染する非性的な感染経路。
・Autoinoculation:患者自身が他に皮膚や粘膜の感染病変があり、そこからHPV感染が外陰部に起きる経路。
・Sexual abuse:報告により、この感染経路の割合は10%未満から90%。性的虐待による感染は、年齢が上昇するごとに可能性が高まる。4歳未満と、4−8歳では、後者で性的虐待による感染は2.8倍になった。
・Perinatal, prenatal transmission:経腟分娩で出生した新生児が、母の外陰部から感染する。羊水や臍帯血からもHPV感染がが検出された報告もあり、子宮内での上行性感染や血行性感染の可能性も考えられている。
・媒介物による感染:汚染されたタオル・下着などがHPV感染の経路といいう意見もある。実際には、少ないと考えられる。
 
 小児の尖圭コンジローマ患者で、感染経路の特定は、非常に複雑である。潜伏期間が成人では3週間から8ヶ月とされ、平均3ヶ月の潜伏期間がある。Serotypingを行っても、感染経路を確定することは難しい。
 
 
Clinical manifestation
 尖圭コンジローマは、最初は、肌色・ピンク色・褐色の柔らかい湿った丘疹で直径は数mmである。
 数週間から数ヶ月をかけて、丘疹は癒合し、大きくなる。しばしば、カリフラワー上と言われる形態になる。
 男児では、尖圭コンジローマは、肛門周囲が最も多く、陰茎にはあまり認めない。女児では、肛門周囲、陰唇、処女膜、膣前庭、尿道口周囲に見られる。肛門や膣の内壁の粘膜面にも見られることがある。病変は、時に掻痒感・疼痛があることがあるが、通常は無症状であり出血も稀である。
 
Clinical course
 小児の尖圭コンジローマの自然経過に関するデータはすくない。しかし、数年で自然治癒するという報告はある。41例の報告では、5年以内に無治療で自然治癒したのが6/8例であった。治癒までの平均は9ヶ月、。治療された33名のうち、9例は治療が奏功、16例は治療には奏功しなかったが自然治癒した。治癒までの平均は25ヶ月であった。免疫抑制により臨床経過が長引いたり、病変が広範囲になるという報告がある。
 
Diagnosis aand evaluation
 尖圭コンジローマの診断は、臨床診断である。生検はほとんど不要である。病理組織学的には、下記の特徴がある。
・Marked acanthosis with some papillomatosis and hyperkeratosis
・Vacuolated koilocytes
・Coarse keratohyaline granules
 PCRなどでウイルスのserotypeを確定できる。
 
Assessment of sexual abuse
 患者の評価をするにあたって、可能性は低いが、性的虐待による感染の可能性を十分に考慮する。4歳未満では割合は少ないが、完全には否定できない。
 保護者と本人に問診し、診察・検査で、性的虐待・他の性感染症の除外をすることが重要である。何かしら性的虐待を示唆する所見がある時には、各医療機関のポリシーに従い、child protective serviceや行政機関に通告する。特に4歳以上では、注意して評価する。例外は、10代で同意の上で性交渉を行っていると伝えた場合と、多くの皮膚病変(nongenital warts)がある免疫抑制状態の小児である。
 性感染症のスクリーニングが必要と考えられる場合には、淋菌、クラミジア、トリコモナス、HIVB型肝炎C型肝炎、梅毒の検索を行う。
 
Differential Diagnosis
・伝染性軟属腫
・Pyramidal perianal papules
・扁平コンジローマ(梅毒)
・Epidermal nevi
 
Treatment
 治療戦略は、機械的or化学的に感染組織を破壊し、感染細胞に対する宿主免疫を向上されることになる。
 自然治癒する疾患であるので、尖圭コンジローマに対する治療を待つというのも選択肢である。実際に、無治療で経過観察はよく行われる。症状(掻痒感、出血、疼痛)があるときには、治療を行う。見た目の上で、患者の精神的な苦痛や社会的な不利益があれば、治療を行う。2年以上治癒しない病変も、今後改善する可能性が低いので治療する。
 
Therapeutic options
 多くのち療法が選択可能であるが、治療効果が高く再発の少ない、絶対的に優れた治療法はない。凍結療法やレーザー治療は、年少児では、恐怖や疼痛の問題があり、難しい。局所療法が初期治療として選択されることが多い。最も頻用されるのが、イミキモドクリーム(imiquimod)とpodophyllotoxinである。小児での治療成績の報告は限られる。外科治療やレーザー治療は、巨大病変や治療抵抗性の病変に対してのみ実施する。
 イミキモドクリームは、局所の免疫反応調整役である。ランダム化比較試験で、外陰部と肛門周囲病変に効果を示した。5%クリームを週3回(最大16週間)塗布する。3.75%製剤は1日1回(8週間まで)使用する。
 12歳未満の小児での安全性の情報は不足しているが、ケースレポートでの有用性は報告されている。8例のケースシリーズもあり、6例が6−12ヶ月のうちに、病変が治癒した。
 最も多い副作用が、皮膚への刺激である。
 外科的治療とレーザー治療は、1cm以上の大きな病変や局所療法で改善しない例に限られる。凍結療法、電気焼灼、CO2レーザー、手術的腫瘍減量などが選択肢である。
 
Follow-Up
 HPV感染症は、子宮頸がん、肛門がん、陰茎がんに関連している。小児期にHPV感染することが、将来のがんリスクにどのくらい関与するのかは分かっていない。肛門周囲病変があり肛門縁を超え内側粘膜に病変が達していた場合には、長期の定期的フォローアップを行い、肛門がんの所見が無いかを確認することが推奨される。