【治療の継続に関して】
<臨床的に悪化している・患者が不安定な場合>
再評価を行う。感染巣が見つからない場合には、更に広域の抗菌薬を使用する。セフェピムをメロペネムに変更しバンコマイシンを追加したり、アミノグリコシド、シプロフロキサシン、アズトレオナムを追加するなど。96時間以上発熱が持続する場合には、抗真菌薬の追加が考慮される。
<感染巣・起炎菌が特定された場合>
抗菌薬を変更することができる。臨床的に安定し、改善傾向ならば、筆者らは、抗菌薬を適切なものに変更し、7−14日間治療などそれぞれの疾患に応じた治療を行い、ANC>500となるか、増加傾向になるまで継続する。
<感染巣が特定されない場合>
・臨床的に安定し解熱している→24時間以上解熱し、状態が安定している時には、ANC>500まで抗菌薬を継続する。しかし、追加でGram陽性菌(バンコマイシンやリネゾリド)、陰性菌カバーの抗菌薬(アミノグリコシドやキノロン)を投与していた場合には、48時間で終了する。
・臨床的に安定し、96時間以内で発熱が持続している場合→評価を繰り返す。48時間で、追加でGram陽性菌、陰性菌カバーの抗菌薬を投与していた場合には、中止して良い。エンピリック治療の抗菌薬を単剤で治療を継続する。状況が変化したら、その都度、抗菌薬を変更したり、評価を繰り返す。
・臨床的に安定し、96時間以上発熱が持続したり、再発熱が見られた場合→エンピリック治療を継続し、再評価を繰り返す。追加のマネジメントは、骨髄抑制からの回復が予想される期間による。
→まもなく骨髄抑制から回復する場合には、そのままの治療を継続。変化があったら(身体所見、血液検査、画像検査で新たな感染が見つかる)、抗菌薬を変更する。
→骨髄抑制まで時間がかかる場合、抗真菌薬を追加することが多い。同時に、感染症以外の発熱の可能性を考慮する。
【抗真菌薬の追加に関して】
適応:広域抗菌薬を投与しているにもかかわらず、発熱が再燃したり、96時間以上持続する場合には、骨髄回復に時間がかかり、感染巣が特に見つからないときには、抗真菌薬を投与する。
真菌感染症のリスクが高いのは以下の場合である
・AML
・再発性または高リスクのALL
・10日間を超える好中球減少
・著しい骨髄抑制を起こす化学療法
・高用量のPSL14日以上
・同種造血幹細胞移植
・GVHD
【真菌感染症の検索】
USとCT(肝臓と脾臓)
胸部CT
副鼻腔CT
疑わしい病変の生検
【抗真菌薬】
リポソーマル・アムホテリシンB、エキノキャンディン(カスポファンギン、ミカファンギンナトリウム、アニデュラファンギン)、アゾール(ボリコナゾール、ポサコナゾール)
どれが良いかの結論はないが、予防と異なるクラスの薬剤を使用することが多い。カスポファンギンとアムホテリシンBの効果が同等であったという報告や、ボリコナゾールよりアムホテリシンBがエンピリック治療としては効果が高かったという報告はある。
【治療期間】
・抗菌薬治療
通常は、48時間血液培養が陰性で、患者が24時間以上解熱しており、ANC>500または増加傾向になったら終了する
しかし、リスクの低い患者については、より短い治療期間が適切かもしれない。2017年にInternational Pediatric Fever and Neutropenia Guidelinesが改定され、リスクの低い症例では72時間以上抗菌薬を投与し、24時間以上解熱し、感染巣が特にない場合には、骨髄回復の状態に関わらず、退院してもよいという点が変更された。
・抗真菌薬
あまりエビデンスはないが、骨髄回復まで継続する。
【経口抗菌薬への変更】
消化管吸収が可能ならば、症例ごとに経口抗菌薬への変更を考慮する。24時間以上解熱、臨床的に安定している、血培陰性、局所感染があってもコントロールできている、ANC>100で骨髄回復傾向、48時間以上静注している、ことを満たせば、安全に経口抗菌薬へ切り替えることができる研究もある。
【G-CSF製剤】