小児感染症科医のお勉強ノート

群馬県立小児医療センターで感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

デングのまとめ(後半) Manson's Tropical Diseases

Virological diagnosis
 診断は、血清診断、分子技術によるウイルス検出、まれにウイルス分離が行われる。すべての時期において、感度も特異度も十分な検査は無い。
 最初の3-5病日には、血中のDENV RNAを検出するRT-PCRが最も感度・特異度が高い。しかし、解熱後にはviremiaが改善して、有用性が落ちる。
 ELISAによるanti-dengue IgM, IgGの検出は、primary infectionとsecondary infectionの鑑別に有効。しかし、感染早期には、感度が悪く、ペア血清が必要。フラビウイルスで交差反応があるため、感度も高くない。IgM antibody capture (MAC)は、他のフラビウイルスとdengueを区別できる特異度の高い検査になる。一回の検査で確定診断ができ、感度は78%(急性期)、97%(回復期)であるDENVに対するIgGはsecondary infectionであれば、急激に上昇する。4倍の上昇がfebrile phase(または入院時)と3-5日後に確認できたら、確定する。Primary infectionであれば、2-3週後に再検して確定する。
 最近は、non-structural protein 1 (NS1)のELISAが商業ベースで利用可能で、感度、特異度とも良い。
 
IgMの感度はday5くらいから上昇する。)タイでのレクチャースライド
 
(NS1の感度は、day3くらいまでは高いが、後半になると低下する。) タイでのレクチャースライド
 
Management
 マネージメントは、重症度を判断し、早期に合併症とwarning signを認知することである。適切なマネージメントがなされたら、死亡率は1%未満である。
WHOのガイドラインは、血行動態とwarning signに重点を置いている。初診時には、注意深く病歴聴取し、診察し、血算を確認する。初期のwarning signのない患者は、連日外来フォローアップで管理することを推奨している。患者・保護者には、「持続する嘔吐、腹痛、不穏、出血、四肢の冷感」が無いかを注意するように指導する。解熱剤(アセトアミノフェン)は使用して良い。経口補水を推奨する。外来でcritical phaseが終わるまで連日診察する。
 入院基準は、(1)warning signのある患者、(2)妊娠・高齢・低年齢・DM・CKD・肥満・出血性疾患などの合併症のある患者、(3)一人暮らしや病院から遠い患者。
(WHOガイドラインの入院基準)
 
Management of patients with warning signs 
 入院の上で体液バランス、バイタルサイン、末梢循環、尿量をモニターする。ベースラインのHctを計測し、WHOガイドラインに従い繰り返しチェックする。循環が保てる最小量の補液を行う。初期は、5ml/kg/hとして、2時間おきに反応を見ながら減量する。等張液の投与はcritical periodのみにしないと、overloadになるリスクが高い
 
Management of severe dengue
 ICU管理が望ましい。急速に補液を行う。WHOは最初の1時間で晶質液を5ml/kg/hで投与し、適宜bolus投与する。血圧、脈拍、尿量、CRT、Hctをもとに次のステップに進む。改善が見られたら、補液を徐々に減量する。改善がなく、Hctが低下している場合には、重篤な出血(消化管や膣からの出血)が隠れている可能性を考える。輸血を早急に行う。予防的に血小板輸血は不要であるが、重度の出血のときには考慮する。ショックが重度であれば、膠質液を使用する。酸素投与はショックの患者全員に行う。不整脈や心筋障害が見られることがあり、ECG, 心エコーを確認する。腹部エコーで胆嚢壁の腫大、腹水・胸水を確認する。
 
 
 
Antiviral and adjunctive therapies
 デングに特異的な治療薬はない。ステロイドは有効性が証明されず、IVIGも血小板数の回復に有用ではないので、投与しない。
 
 
WHOガイドライン2009 (2.3.2 Treatment according to groups A-C, p33)
外来管理可能な患者 (Group A):十分な水分を経口摂取できる、6時間に1回は排尿がある、warning signが1つもない。
→毎日外来受診(critical phaseが終わるまで)。熱型、経口摂取量、尿量、warning sign、plasma leakage、出血傾向、Hct、WBC、Pltを確認する。
 
入院管理が必要な患者 (Group B):warning signがある、合併症(基礎疾患)がある、社会的事情。
 
緊急の治療が必要な患者 (Group C):重症のplasma leakageがありショックになっている、胸水・腹水のために呼吸障害がある、重症の出血、重症の臓器障害。
 
Prevention and Control
 Aedes aegyptiシマカの制御が重要。都会の環境で生活するので、産卵できる環境をなくすようにする。水の供給する水道の整備、ゴミの廃棄、下水の管理などである。アウトブレイク時には、殺虫剤も有効である。住民への健康教育や市民参加も重要。Wolbachiaに感染した蚊を放ったり、遺伝子操作をした蚊を放って、制御する方法も考えられている。
 
Vaccines
 治験中。(この教科書が執筆当時)
(レクチャー:4価のリコンビナントワクチンが製造されている。対象は9-45歳。0, 6, 12ヶ月の3回接種。生ワクチンなのでHIVなどの免疫不全者には禁忌。メキシコ、フィリピン、タイ、ブラジルなどで認可されているが、FDAでは認可されていない。DHFを88.5-90%減らす効果があった。DENV-2に対する抗体上昇が十分に得られないことが問題。長期的にどれくらい抗体価が維持されるかも不明。)