小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

バンコマイシンのTDMが変わります

シンガポールASPレーニングコースの報告

 今日、紹介された論文で、興味深かったものです。

バンコマイシン血中濃度モニターに関するガイドラインが改定されるにあたり、ドラフトが出ました。

 今回の一番の変更点は、TDMの目標がトラフ値からAUC24/MICに変わること。PK/PD的により正しい方向に行くということです。背景には、トラフを上げると腎障害が多くなることがあります。AKIはバンコマイシン投与中の5−43%の患者で起きてきた。軽度のAKIであっても、長期の生存予後が悪化し、入院期間が伸び、医療費が増大することが示されています。
 AUC24/MICの目標は400-600mg.h/Lになるようですが、この目標を達成するとトラフ値は下がる計算になります。(でも、説明では、持続投与にしたり、1日に頻回投与になるとトラフは上昇します。)AUCの測定には、ベイジアン解析がバンコマイシンの投与量の設計に推奨されるようです。小児や肥満、腎障害がある患者など、すべての患者においてやることが必要なようです。
トラフ値を目標にすることは重症のMRSA感染症患者においてもはや推奨されない。
Trough targets are “no longer recommended for patients with serious infections due to MRSA”. この一文が今回の改定のハイライトです。
 

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https://www.ashp.org/-/media/assets/policy-guidelines/docs/draft-guidelines/draft-guidelines-ASHP-IDSA-PIDS-SIDP-therapeutic-vancomycin.ashx