小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

Hib・肺炎球菌ワクチン接種率の低いパキスタンでは、初回の単純型熱性けいれんでも細菌性髄膜炎が多い

Frequency of acute bacterial meningitis in children with first episode of febrile seizures

Siddiqui HB, Haider N, Khan Z.
 
J Pak Med Assoc. 2017 Jul;67(7):1054-1058.
 
PMID: 28770886
 
 パキスタンからの報告です。初回の熱性けいれんで、12時間以内に救急外来を受診した小児(6-60ヶ月齢)を対象にしました。
 157例が研究にincludeされました(平均18.5ヶ月齢)。12例(7.6%)が細菌性髄膜炎でした。6-12ヶ月が5例、13−18ヶ月が4例、3例が19-60ヶ月でした。8例のみ起炎菌が判明し、肺炎球菌6例、インフルエンザ桿菌2例でした。
 考察では、パキスタンのワクチン接種率(Hibと肺炎球菌かは不明)は約50%であるが、今回、研究でincludeされた症例のワクチン接種歴は信頼できるデータではなく、どのくらいの割合が接種していたのか不明。
 
 熱性けいれんと思われる症例の、7.6%が細菌性髄膜炎というのは非常に高い割合だと思います。Hib/肺炎球菌ワクチン導入前の日本でももっと低かったのでは無いかと思います。パキスタンの場合、ワクチン接種率が低いという事実に加えて、医療機関へのアクセスが悪く、熱性けいれんでも本当に重症の症例が多く含まれ、結果として細菌性髄膜炎が多いのではないかと思います。
 
 パキスタンは野生のポリオが未だに根絶されておらず、ワクチンの充実が急務だと思います。日本人のビジネスマンの渡航もかなり多いので、気をつけたいです。