小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

2021-01-01から1年間の記事一覧

カバ咬傷は、もはや動物咬傷のレベルではない

以前、亀田総合病院の「咬傷・外傷後の抗菌薬」の改定作業を行いました。 (臨床ガイドライン | 亀田総合病院 の中にあります) 日本だと、イヌ・ネコ・ヒトの咬傷が多いのですが、世界は広いです。 カバは、可愛らしい見た目によらず、獰猛な動物で、人が襲…

妊娠中の新型コロナワクチンについて

妊娠中のため、新型コロナワクチン接種を躊躇されている方も多くいらっしゃると思います。 厚生労働省からは、下記のような情報提供があります。妊娠中もワクチンの接種を勧めています。これは、妊娠後期にCOVID-19になると重症化するリスクが高く、早産や妊…

新型コロナウイルスワクチンと授乳について

" data-en-clipboard="true"> 新型コロナウイルスワクチン(ファイザーとモデルナ)は、mRNAワクチンという新しい仕組みのワクチンで、絶大な効果をもたらします。一方、新技術であるがゆえ、妊娠中や授乳中の女性が、接種に不安を感じられるのも、当然だと…

日本の急性脳炎・脳症の予後因子

" data-en-clipboard="true"> 日本のDPCデータを使った小児の急性脳炎・脳症の予後不良因子の検討です。 " data-en-clipboard="true">乳児のインフルエンザ脳症というのが悪いパターンだと思っていましたが、むしろインフルエンザウイルスと単純ヘルペスウイ…

無殺菌乳が原因となるアウトブレイク

Increased Outbreaks Associated with Nonpasteurized Milk, United States, 2007–2012 Emerg Infect Dis. 2015; 21: 119. 日本では非加熱殺菌乳(無殺菌乳)の販売や流通は禁止されています。米国で発生した無殺菌乳によるアウトブレイクの報告です。 2007-…

葛西手術後の予防的抗菌薬について

" data-en-clipboard="true"> 胆道閉鎖症は、まれですが、生後3ヶ月以内に葛西手術という手術が必要となる重篤な肝疾患です。葛西手術後には、胆管炎が頻発し、胆管炎を繰り返すと、肝臓の予後が悪くなり、肝移植が必要になるケースが増えます。 " data-en-c…

症状によるスクリーニングでは、新型コロナ感染者の45%は特定できない

" data-en-clipboard="true"> 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大により、院内感染が問題となっています。多くの病院が入院患者全員のスクリーニングに舵を切っています。当院でも、様々な経験を通じ、議論を経て、全入院患者へのスクリーニング…

保育園は、世代間の低学歴の再生産を緩和する

" data-en-clipboard="true"> " data-en-clipboard="true"> 先日、エマニュエル・トッドの「大分断」を読んでいました。教育というと、誰でもどんな人でも受けることができ、教育により社会経済的に恵まれない家庭に産まれても、その格差を無くす方法と思っ…

小児の誤嚥性肺炎の特徴

小児の誤嚥性肺炎は、神経疾患などの基礎疾患がある子が大半です。いわゆる「寝たきり」のため自覚症状の問診は困難(ほぼ無理)で、他覚的所見も取ることが難しいです。そのため、ついつい長期間の抗菌薬投与が多くなります。 今回紹介するのは、米国の小児…

急性副鼻腔炎の合併症

AAPの副鼻腔炎のガイドラインのから、急性副鼻腔炎の合併症をまとめました。 ガイドライン本文はコチラです。 Clinical practice guideline for the diagnosis and management of acute bacterial sinusitis in children aged 1 to 18 years Pediatrics. 201…

先天性サイトメガロウイルス感染症の診断には乾燥ろ紙血が使える

先天性サイトメガロウイルス(cCMV)感染症は、胎児を妊娠中の母親がサイトメガロウイルス(CMV)に感染して、子宮内の胎児にCMVのが感染する疾患です。 脳内の石灰化や、聴力障害、運動発達遅延などの重篤な後遺症を残します。出生後に、治療をすることで聴力…

乳児発熱の血培陰性確認は48時間

" data-en-clipboard="true"> 乳児の発熱(特に乳児期早期発熱)では、血液培養の採取がよく行われますが、培養開始から何時間まで見たら、安心して「血培陰性です」と言えるでしょうか? " data-en-clipboard="true"> 小児病院で勤務していると、遅れて発育…

尿所見のある乳児期早期発熱に髄液検査は必要か?

生後3ヶ月未満の発熱は、小児科的emergencyですが、特にワクチン未接種の生後2ヶ月未満は、「細菌性髄膜炎は大丈夫かな?」とより注意深くなります。 とはいえ、この年齢層であっても、細菌性髄膜炎の頻度は低く、普通のウイルス感染、尿路感染症の方が熱源…

小児におけるセフトリアキソンの副作用

セフトリアキソンは、第3世代セファロスポリンとうカテゴリーの抗菌薬です。市中肺炎、尿路感染、髄膜炎など、幅広い感染症に使用できる抗菌薬で、かつ1日1回投与で済むので、感染症診療には非常に重要な薬剤です。 一方、新生児では核黄疸のリスクになる…

鹿肉でトキソプラズマ症のアウトブレイク!

" data-en-clipboard="true"> トキソプラズマ症は、原虫のToxoplasma gondiiによって引き起こされる感染症です。感染しても無症状のことも多いのですが、発症した場合には、発熱、倦怠感、頭痛、リンパ節腫脹などの症状が見られます(EBウイルス陰性の伝染性…

培養陰性の肺炎でde-escalationしても予後は悪化しない(むしろ良い)

" data-en-clipboard="true"> 肺炎の患者さんの治療は、経験的治療を行うのですが、多剤耐性菌による肺炎を起こしやすい背景(入院歴、保菌歴、免疫不全など)があると、初期から広域の抗菌薬を使います。しかし、喀痰から有意な菌が検出されない時、患者さ…

川崎病で腫脹したリンパ節の中では何が起きているのか?

" data-en-clipboard="true"> 川崎病(KD)は、発熱や眼球結膜充血などの特徴的な症状を呈する疾患です。頸部リンパ節腫脹を認める頻度が高く、診断基準の1項目になります。リンパ節腫脹と発熱のみしか症状がない川崎病は、化膿性リンパ節炎との鑑別が難しい…

MIS-Cが重症化する因子

" data-en-clipboard="true"> " data-en-clipboard="true">小児多系統炎症性症候群(MIS-C)は、小児がCOVID-19に罹患した後に、発症する川崎病に類似の病態です。しかし、ショックや心筋炎などの重篤な合併症を起こすことがあり、死亡例も報告されています…

小児のウイルス性筋炎(良性急性小児筋炎: BACM)のまとめ

" data-en-clipboard="true"> 小児が、急に下肢の痛みを訴えたり、歩くのを嫌がった場合、ウイルス性筋炎≒良性急性小児筋炎(BACM)が鑑別に挙げられます。BACMは、自然軽快する疾患ですが、下肢痛の原因として見逃されることも多いです。典型的には、インフ…

小児心臓外科術後の感染症の解析

" data-en-clipboard="true"> 小児の心臓外科術後の炎症反応上昇は、アプローチが難しく、いつも苦戦します。理由としては、侵襲が大きくCRPが上昇しやすい、医療関連デバイスが多い(気管内挿管、中心静脈カテーテル、腹膜透析カテーテル、尿道カテーテル、…

期待が持てるデング熱ワクチン

" data-en-clipboard="true"> デング熱は、年間3億9000万人が感染し、50万人が入院する、熱帯地域に多い疾患です。デングウイルスが原因ですが、蚊が媒介して、人に感染します。デングウイルスは4つの血清型(DEN-1〜DENV-4)があり、異なる血清型に複数回感…

下気道症状がない肺炎(occult pneumonia)について

" data-en-clipboard="true"> 明らかな下気道症状がない肺炎を、occult pneumoniaと言います。不明熱と紹介されて、肺炎が見つかることもあります。このoccult penumoniaをどのような状況で疑うのか、なかなか難しいですが、遷延する発熱(特に5日以上)、咳…

腸間膜リンパ節炎のマネージメント

" data-en-clipboard="true"> 小児科外来で、虫垂炎らしい右下腹部痛が来た時に、エコーで「虫垂腫大はありません。腸間膜リンパ節の腫大を認めます。」というレポートが返ってきて、少しがっかり(?)することがあります。診断は、「腸間膜リンパ節炎」と…

細菌性骨髄炎と非感染性骨髄炎

小児の細菌性骨髄炎(BO)は、黄色ブドウ球菌が多く、四肢の長管骨に多いことが特徴的です。成人では、椎体炎が多いことと対照的です。 急性の経過で、血液培養などから原因菌がすんなり判明するケースは問題ないのですが、緩徐な経過で発症するケースもあり…

小児の肺炎の治療期間は何日間?!

" data-en-clipboard="true"> 「小児の市中肺炎を何日間治療するか?」とてもシンプルですが、実は、明確な答えがありませんでした。CRP陰性化ではもちろんありません。 " data-en-clipboard="true"> " data-en-clipboard="true"> これまでに発表された中で…

小児穿孔性虫垂炎で治療10日間・内服へ変更可能

" data-en-clipboard="true"> 小児の虫垂炎は、低年齢ほど穿孔するリスクが高い疾患です。今は、急いで手術をするのではなく、まずは抗菌薬で炎症を沈静化させてから、時間をあけて虫垂切除術を行います (interval appendectomy)。 " data-en-clipboard="tru…

安定した細気管支炎はSpO2連続モニター不要

" data-en-clipboard="true"> 冬の小児科病棟と言えば、RSウイルスによる細気管支炎の子がたくさん入院しているものでした。しかし、RSウイルスの流行は、いつしか夏に移動し、通年で流行するようになり、「日本も亜熱帯になったなあ」と、小児科医に地球温…

食物蛋白誘発性腸炎(FPIES)と感染症

長い名前ですが、新生児-乳児食物蛋白誘発性腸炎(FPIES)という病気があります。FPIESは、乳幼児期に発症する食物アレルギーの1種です。典型的には、原因食物の摂取から1-4時間後に、大量に嘔吐して、顔面蒼白、ぐったり、血圧低下、下痢などを伴います。牛…

小児の血液培養はルーチンで嫌気ボトルも採取するべき?

血液培養には、好気ボトルと嫌気ボトルがあります。小児では、理論的には嫌気ボトルでしか発育しない「偏性嫌気性菌」による菌血症は少ないので、ルーチンに嫌気ボトルに採取する必要はないと考えられています。嫌気ボトルの使用は、腹腔内感染症(穿孔性虫…

学校閉鎖は新型コロナ流行にあまり影響を与えない

" data-en-clipboard="true"> 学校閉鎖は、子供にとって悪影響が大きいことが、分かってきています。一方で、学校閉鎖を行わないと、流行の拡大を止められないのではないかという懸念もあります。(この考えはもっともだと思います。) " data-en-clipboard=…