小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

沖縄の小児レプトスピラ症とレプトスピラ症の治療

沖縄からの小児レプトスピラの報告です。 トライアスロンで感染者が出たことなどで有名なレプトスピラですが、沖縄では小児例の報告も結構あることに驚きました。 「沖縄のレプトスピラ症は、8−9月に、川で遊泳した10代男児に多い。」 Childhood leptospiros…

B型肝炎母児感染予防の日米の違い

注意:Facebookでご指摘を受けて、一部修正しました。 B型肝炎の母児感染予防策は、確実に実施できたら有効性が非常に高いです。 2013年から、日本小児科学会の指針が変更され、国際方式になりました。 (http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/HBV20131218.…

小児の精巣上体炎はほとんど細菌感染ではない

小児と成人(思春期以降)では、精巣上体炎の原因が大きく異なります。 小児の精巣上体炎の原因は多くははっきりしないのですが、少なくとも細菌感染は稀であるという論文です。 Are antibiotics necessary for pediatric epididymitis? Santillanes G, et a…

腸チフスワクチンの使い分け

海外渡航に行く時に、やっておいた方が良いワクチンに、腸チフスワクチンがあります。私も、東南アジアに行く時に、TYPHIM Viを接種しました。いまは、結合型ワクチンが開発され、より有効性が高くなっています。 日本でも一部のトラベルクリニックで接種可…

新生児の早発型敗血症(early-onset sepsis)における血液培養陽転までの時間(time to positivity)の検討

新生児の敗血症は、症状がわかりにくいため、どうしても抗菌薬投与が長くなりがちです。血液培養が陽性になっていなくても、抗菌薬を止めにくいのが現状です。本研究では、新生児の早発型敗血症において、血液培養が陽転するまでの時間を検討しました。臨床…

手指の表層感染症

Acute hand infections Am Fam Physician. 2019;99(4):228-236. (https://www.aafp.org/afp/2019/0215/p228.html) 手指の感染症のまとめです よく見る表層感染の部分をまとめました (1)爪周囲炎 (acute paronychia) (2)ひょう疽(felon) (3)ヘルペス…

EBウイルスが起こす皮膚症状(後半)

多形滲出性紅斑 多形滲出性紅斑(EM)は、急性発症の自然治癒する皮疹で、典型的には、ターゲット状の皮疹を呈し、粘膜病変を伴うことがある。ウイルス感染後の過敏反応と考えられている。半分程度の症例では、原因薬剤や原因微生物が不明である。IMや慢性EB…

EBウイルスが起こす皮膚症状(前半)

EBウイルス感染としては典型的ではない皮疹の患者さんを見たのでまとめました。 Epstein-Barr virus and skin manifestations in childhood Di Lernia V, et al. Int J Dermatol. 2013;52:1177-84 EBVは、ヒトのB細胞に感染するヘルペスウイルス属のウイルス…

川崎病のオリジナル論文

指趾の特異的落屑を伴う小児の急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群 アレルギー 1967;16(3):178-222 1967年に、川崎富作先生が発表した急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群の50例の報告です。川崎病のオリジナル論文は、日本語で発表されたために、海外への認知が遅く…

Borrelia burgdorferi (Lyme病)について

病態生理と免疫 Lyme病は、スピロヘータであるBorrelia burgdorferiによって起こされる疾患である。B. burgdorferiは、らせん状で微好気性菌で、発育は緩徐で、選択培地が培養には必要である。3個の表面蛋白(OspA, OspB, OspC)と41-kdの鞭毛のタンパク質が…

早産児の母が大腸菌保菌者の場合、早発型敗血症(EOS)に注意が必要

当院の小泉先生の論文です。大腸菌は、新生児(特に早産児)にとっては、非常に重篤な感染症を起こします。妊婦のGBSスクリーニングの重要性は確立していますが、大腸菌保菌スクリーニングや予防方法に関しては、これまでほとんど研究がありませんでした。早…

毛細血管拡張性運動失調症と免疫不全

まとめ 「毛細血管拡張性運動失調症(AT)では、高率にガンマグロブリン低下やリンパ球減少が認められる。年齢が上がるにつれて、免疫状態にあまり変化はない。しかし、気道感染症を反復することが、ATでは問題になる。中耳炎や副鼻腔炎など上気道感染の反復…

麻疹の曝露後予防 CDCの推奨

麻疹に対する抗体が証明できない人が、麻疹に曝露した場合には、曝露後予防(post-exposure prophylaxis; PEP)が提供されるか、学校・病院・保育園などの場から隔離をされるべきである。PEPは、感染防御の可能性があり、重症化を防ぐ可能性がある。麻疹に感…