小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

精巣上体炎のまとめ (Principles and Practice of Pediatric Infectious Diseases, Fifth Edition)

精巣上体は、精巣の上極後方に付着する管状の構造物で、精子の貯蔵・成熟を担っている。精巣上体炎は、精巣上体に炎症反応・感染が生じる病態である。 原因・疫学・病態生理 精巣上体炎の正確な疫学データは無いが、性的活動がある思春期と若い成人男子に多…

精巣上体炎はドップラーエコーで診断

Acute Epididymitis in Greek Children: A 3-year Retrospective Study Eur J Pediatr. 2008;167:765-9. 急性陰嚢症は、精巣機能の温存をするために、迅速な診断と必要に応じた外科的治療が必要な疾患である。急性精巣上体炎(acute epididymitis)は、近年、…

PICカテーテル先端は中心静脈に留置したほうが合併症が少ない

PICカテーテルは小児では頻用されます。中心静脈にまで到達させることが難しいことも結構あります。中心静脈に到達しないと、合併症が多くなることを示した少し古い研究です。 (小児科医の本音としては、PICカテーテル先端は中心静脈に留置したほうが良いが…

エールリヒアとアナプラズマ感染症

Erlichiasis and anaplasmosis 病原体 Anaplasmataceae科は、リケッチアに分類される。Anaplasma, Ehrlichia, Neorickettsia, “Candidatus Neoehrlichia”の4つの属がヒトに感染を起こすことが知られている。Anaplasmaの4種、Ehrlichiaの5種がヒトに感染する…

8歳未満でもドキシサイクリン使用可能(Red Book 2018)

ミノマイシンなどのテトラサイクリン系抗菌薬は、歯牙黄染が副作用として知られており、8歳未満の小児への使用が禁忌です。しかし、テトラサイクリン系であるドキシサイクリンは、カルシウムへ結合する割合が低く、歯牙黄染のリスクが低いのではないかと考え…

小児の結核性髄膜炎を示唆する所見 

A Diagnostic Rule for Tuberculous Meningitis Arch Dis Child. 1999;81:221. 日本では小児の結核性髄膜炎はまれですが、タイやベトナムの病院では、原因不明の髄膜炎では当たり前のように、結核性髄膜炎を疑って、治療をしていました。少し古い論文ですが…

小児の潜在性結核感染症(Uptodateのまとめ)

小児の潜在性結核感染症(LTBI)は、直近で感染したパターンが多く、何十年も前に感染していることが多い成人とは対照的である。2−4歳未満の小児は、播種性結核や結核性髄膜炎などに進展するリスクが高い。小児において活動性結核は、ほとんどが感染後2−12ヶ…

小児結核の検査について

Laboratory Diagnosis of Mycobacterium Tuberculosis Infection and Disease in Children J Clin Microbien. 2016;54:1434-1441. 小児結核の検査のレビュー記事です。 成人では、Mycobacterium tuberculosis(結核菌)に感染しても、発症する確率は生涯を通し…

コロナウイルス感染が川崎病の原因となるか?

ニューヨークでCovid-19罹患後に川崎病に類似した症状を呈するトキシックショック症候群の報告が増加している。コロナウイルス感染後の免疫異常が背景にあるのでは無いかと推定されているが、現時点では学術誌には掲載されていない。しかし、別のコロナウイ…

繰り返す頸部感染・甲状腺感染(特に左側)を見たら、梨状窩瘻を考える

小児科医として知っておきたい点は、「繰り返す頸部感染・甲状腺感染(特に左側)を見たら、梨状窩瘻を考える」ことです。 Diagnosis and Management of Pyriform Sinus Fistula: Experience in 48 Cases J Pediatric Surgery. 2014;49(3):455-9. 目的:梨状…

Autoimmune lymphoproliferative syndrome(ALPS)のまとめ

血球減少(溶血性貧血や血小板減少性紫斑病)にリンパ節腫脹・肝脾腫を合併している場合には、ALPSの可能性を考慮する必要があります。リンパ節腫脹で紹介される患者さんも多いので、疾患についてまとめました。 Autoimmune lymphoproliferative syndrome (A…

非結核性抗酸菌によるリンパ節炎は外科的切除が望ましい

引き続きNTMによるリンパ節炎の研究です。 現時点でNTMリンパ節炎の最も詳細なレビューだと思われます。 The Management of Non-Tuberculous Cervicofacial Lymphadenitis in Children: A Systematic Review and Meta-Analysis Zimmermann P, et al. J Infec…

BCGによる非結核性抗酸菌症の予防効果はかなり高い

BCGワクチンがCovid-19を予防するのでは無いかと世間では言われています。真偽のほどは、まだ分かりません。もともとは乳児の重症結核を予防するのがBCGの役割でしたが、非結核性抗酸菌症によるリンパ節炎やBuruli潰瘍の予防にも有効です。 Does BCG Vaccina…

小児の造血幹細胞移植後の菌血症の危険因子の検討

Microbiology and Risk Factors for Hospital-Associated Bloodstream Infections Among Pediatric Hematopoietic Stem Cell Transplant Recipients Open Forum Infect Dis. 2020;7(4):ofaa093. Duke大学からの報告です。小児の造血幹細胞移植後の菌血症の検…